【英国 5日 AFP】クローン羊の「ドリー」(Dolly)誕生から10年がたつ。ドリーは2003年2月に肺感染症と関節炎を起こし、安楽死させられた。ドリー誕生により引き起こった恐怖感や倫理的論争は、現在も収まる気配がない。医療的進歩も期待されたが、その進捗度や期待に関しては意見が二分する。
ドリーを誕生させた体細胞核移植(SCNT)という技術は、基本的には過去10年間進歩していない。イアン・ウィルマット(Ian Wilmut)博士による画期的な羊のドリー後、馬、牛、豚、ネズミ類、ウサギ、ネコ、イヌなど、羊以外の様々な動物のクローンが作られてきた。
しかし、移植卵の流産率が極端に高く、出産までいたった胚についても、多くが奇形を持ち(ドリー自体もそうだった)、短命で、技術の実践的な応用に懸念がもたれてきた。
実用面でも、がん、心臓病、アルツハイマー症といった重大疾患の治療研究に多額の予算が投じられるようになっているが、実際の医療的進歩は小さい。英国の生物工学監視市民団体「ジーン・ウオッチ」(GeneWatch)のメンバー、ス・ーメイヤー(Sue Mayer)博士は、ドリーが短命に終わったことで、クローン技術の達成度は当初の期待ほどではなかったと語っている。
一方、ウィルマット博士は、1996年のドリー誕生から10周年を迎えた7月5日、スコットランドのエディンバラ(Edinburgh)にあるロスリン研究所(Roslin Institute)で、BBCニュースのインタビューに次のように答えた。
「体外受精(IVF)にせよ他の技術にせよ、新技術の発展を振り返ってみた場合、初めて導入される技術を完全にものにするまでには、常に長い年月がかかるものだ。クローン技術に関しては、50年はかかるだろう」
また、幹細胞クローニング研究への期待も高い。幹細胞は多能性細胞と呼ばれており、いかなる組織にも分化させることのできる細胞。幹細胞クローニングにより、変性疾患を抱える患者たちが、本人の遺伝子とまったく同一の組織からできた臓器などを利用し、免疫不全を起こすことなく再生移植を受けることが可能となるかもしれない。
ドリー誕生後に設立された、ロスリン・バイオサイエンス(Roslin BioScience)社を運営するバイオインダストリー協会(BioIndustry Association)の会長、サイモン・ベスト博士は語る。
ドリーは1950年代のDNA構造の発見と同様に重要な大発明であり、「医療分野における創造性に非常に大きな波をもたらしました。われわれはその恩恵を、今後20年、30年と、徐々に目にしていくことでしょう」。
ドリーが私たちに残したものは何か。ドリー誕生20周年にどのような判断が下されるのだろうか。
写真は生存中のドリー(1997年2月23日撮影)。(c)AFP
AFPBB News トップへ
ユーザー制作のスライドショーをご紹介。無料で簡単な会員登録で見られます。
拡大して見られた人気写真ランキング。会員登録で拡大写真が見られます。登録は無料で簡単。