【6月11日 AFP】米アップル(Apple)は10日、サンフランシスコ(San Francisco)で開催した世界開発者会議(WWDC)で、同社のモバイル向け基本ソフト「iOS」の最新版と、これに伴う新たな音楽配信サービス「iTunes Radio(アイチューンズラジオ)」を発表した。

 iTunes Radioは200を超えるインターネットラジオ局を無料で聴取できるサービスで、アップルの説明によれば、いわば「iTunes Store(アイチューンズストア)」で購入できる膨大な楽曲のカタログだ。運営費は広告で賄い、年内にサービスを開始する予定。

 アップルは「音楽ファンに毎週、数千の新曲を届ける。特に新人や人気アーティストの新曲を、どこよりも早く聴くことができる」とうたう。

 iTunes Radioは音声認識ソフト「Siri(シリ)」と連動し、自身の声で「この曲を歌っているのは誰?」「同じような曲をかけて」などと問いかけて操作できるという。

 アナリストの一部には、iTunes Radioの機能は良くできているが、競合するネット上の音楽配信サービスからユーザーを呼び込むには弱いと指摘する声もある。

 調査会社フォレスター(Forrester)のジェームズ・マッキベイ(James McQuivey)氏は「iTunes Radioの発表は、結局『から騒ぎ』にすぎなかった」と手厳しい。「今回のアップルの発表は、何ら業界を前進させるものでも変えるものでもない。(同様の音楽サービスを提供している)SpotifyPandoraを恐れされるものは、ほとんどない」

 アップルのティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)は、iOSにとって音楽ストリーミング配信サービスは、スマートフォンiPhoneが登場した2007年以降で最大の変革と位置づけている。

■バッテリーの持ち時間も改善

 数々のアップル製品のデザインを手掛けてきたジョナサン・アイブ(Jonathan Ive)氏は、開発者会議の会場で6000人の参加者を前に流された動画メッセージの中で、「シンプルさの中に深淵(しんえん)で不変の美がある」と説明した。「複雑さの中に秩序をもたらした」

 新基本ソフトiOS7では、新トランスペアレンシー(透明)機能によってiPhoneやiPadiPod touchを傾けるとメーン画面の下にある複数の画面を透かして見ることができる。

 マルチタスク機能も強化し、データ処理効率などを高めることでバッテリーの持ち時間を最大限に改善した。AirDrop(エアドロップ)は、近くにアップル端末のユーザーがいた場合、画像や動画などを一瞬にして無線LANで共有できる機能だ。

 さらに、アップル端末所有者のIDを持たない何者かが端末を操作しようとした場合、端末操作をロックするActivation Lock(アクティベーションロック)機能が新たに搭載された。(c)AFP/Glenn Chapman