【5月28日 AFP】米SNSフェイスブック(Facebook)の新規株式公開(IPO)は散々な結果となったが、このことからは、投資家らがソーシャルメディアに期待を膨らませつつも次なるハイテクバブルの契機とはまだ見なしてはいない現状がうかがえる。

 フェイスブックの株価は、公募価格の38ドル(約3000円)から16%下げて初週の取引を終えた。IT業界史上最大の160億ドル(約1兆2700億円)規模のIPOは大きな注目を受けていただけに、広がった失望も大きかった。ユーザー9億人を誇るフェイスブックの株式には投資家が殺到するとの予想は、裏切られた。

■実益重視か、投資熱の低下か、バブル抑止か

「フェイスブック株の急落を見てしまうと、人々は実質収入や実質利益の点でより基本的な原則へと回帰するようになる」と、インディゴ・エクイティ・リサーチ(Indigo Equity Research)のニック・ランデルミルス(Nick Landell-Mills)氏は言う。

 投資家が1990年代のITバブルの際に比べて慎重になっていると指摘するのは、全米ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital AssociationNVCA)のマーク・ヒーセン(Mark Heesen)氏だ。フェイスブックのIPO騒動について「ソーシャルメディアが終わるわけではなく、今後も成長と拡大を続ける」と見る一方で、ITバブル当時の2年間にベンチャー投資家が総額1500億ドルつぎ込んだのに対し、過去2年間の投資額は約600億ドルにとどまったと分析。「(金融)システム内にはるかに少ない資金しか流れ込んでいない。この点が決定的に重要だ」と述べる。

 米メリーランド大学(University of Maryland)のジェラルド・ホバーク(Gerard Hoberg)准教授(金融)は、現在の市場心理から考えて新たなバブルは発生しないだろうと予測する。「現在の市場はとても健全だ。人々は90年代から教訓を得たと思う。それがバブル発生を予防している」

■フェイスブック騒動の影響は…

 ソーシャルメディアの急成長をけん引するのはフェイスブックだが、同業他社へ向けられる投資家の目も厳しい。フェイスブックと強い繋がりを持つソーシャルゲームサイト「ジンガ(Zynga)」の株価はIPO価格から35%、クーポン共同購入サイト大手「グルーポン(Groupon)」はおよそ40%近く下がった。その一方で、ビジネス向けSNS「リンクトイン(LinkedIn)」はIPO価格から株価を2倍に伸ばしている。

 こうした情勢下、「もしフェイスブックが勢いを失えば、他のIT企業も上場を取るべき手段と考えなくなり、むしろ買収されるか不安定な状況が変わるのを待つ方がましだと判断するようになるかもしれない」と、ヒーセン氏は言う。「ソーシャル業界は全体としては投資向きだが、行く手には波乱が待ち受けている可能性がある」

 ランデルミルス氏は、株価を追いたがらない投資家も米アップル(Apple)など実質利益を上げている企業には殺到している点を指摘した。アップル株はこの1年で67%も上昇したが、「私はアップルをバブルだとは決して言わない」と同氏。収益ベースで見ればフェイスブックの株価は高すぎるくらいだとして、「グーグル(Google)が上場した際には付加価値が付いたことを示す明確なデータがあった。だがフェイスブックについては分からない」と述べた。

 ホバーグ氏は、90年代ほどの活力がそもそも市場にないことを強調した。「泡がふくれあがるように株価が上昇するのを、投資家が許していない」。したがって今後、新規上場する企業は業種を問わずフェイスブックの失敗を考慮に入れざるを得なくなると述べ、「(フェイスブックのIPOは)非常に否定的な反応を受け、引受幹事もマスコミに大々的に叩かれて2度と同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。そのため、次のIPO価格は引き下げられ、投資環境の健全化が図られるだろう」と分析している。(c)AFP/Charlotte Raab

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