【3月29日 AFP】地球温暖化防止キャンペーンの一環として1時間の消灯を地球1周リレーさせるイベント「アースアワー(Earth Hour)」が今年も31日に行われるが、インターネットを使ってこのイベントを広めようとしている環境団体などが「ジレンマ」に直面している。

「アースアワー」は、世界各地で午後8時30分から1時間の消灯を奨励する運動。130か国で呼び掛けられている。

 しかし、アースアワーを宣伝しようとEメールを送ったり、ツイッター(Twitter)でつぶやく度、また動画サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された呼び掛けを誰かが見たり、フェイスブック(Facebook)で「いいね!」がクリックされる度に、環境活動家たちは解決したいと願っている問題をかえって悪化させているのだ。コンピューター、サーバー、データバンクなどが使用する電力を化石燃料で発電していれば、その過程で二酸化炭素(CO2)が生じるからだ。

■メール送受信にかかる排出量、年間13トン超

 仏環境・エネルギー管理庁(French Environment AgencyADEME)の2011年の推計によると、一般的な会社員の業務上のCO2排出量は、Eメールの送受信だけで年間13.6 トン前後に上る。この数値は仏国民1人当たりの年平均排出量の2倍以上、米国民1人当たりの同3分の2に相当する。

 これは、従業員100人規模・年間勤務日数220日の仏企業で、社員1人の1日のメールのやりとりについて、1通のサイズを平均1メガバイトとして受信58通、送信33通とみなして試算した場合の値だ。CCで送信先を複数にしたり、1通のサイズが大きくなれば、さらにCO2排出量は増える。その逆に、「自分の上司や同僚を送信先に入れたメールの数を1割減らすだけで、1トン分の排出量削減になる。これはパリ~ニューヨーク間の往復フライトの排出量に相当する」(ADEME)という。

 フェイスブックもツイッターも、CO2排出量の指標であるカーボン・フットプリントの値をできる限り抑えるよう努力していると主張する。

 世界に8億人のユーザーを持つフェイスブックが北極圏に近いスウェーデンのルーレオ(Luleaa)に開設した世界で3番目、欧州で初となる自社の巨大データセンターでは、サーバーの冷却に自然の冷気を使っている。同市がクリーンな水力発電を行っている点も、拠点としての決め手となった。

 またツイッターのインフラ担当ディレクター、ラフィ・クリコリアン(Raffi Krikorian)氏は前年、140文字のツイート(つぶやき)1件当たりのCO2排出量は0.02グラムだと述べたうえで、「1日5000万ツイートが行き交えば、1トンの排出量だ。もっと効率よく、もっと改善することができるはず」だと語っている。

■それでもIT系排出量は他産業の6分の1

 では、インターネットはどれだけ気候変動に影響しているのだろうか。

 英調査会社ガートナー(Gartner)の2007年の推計によると、情報通信技術産業の絶対的なCO2排出量は急カーブを描いて増加しているが、世界全体の総排出量からみれば依然わずか2%前後しか占めていない。これは運輸、工業、農業それぞれの排出量の6分の1を下回る。

 郵便や電話を利用したり、移動して直接ミーティングした場合に排出されるはずのCO2が、インターネットによって削減されているという主張もある。

「アースアワー」のアンディ・リドリー(Andy Ridley)事務局長は、同キャンペーンに関連して生じる化石燃料によるCO2排出を埋め合わせるための投資を組織として行っていると説明する。また、イントラネット版ソーシャル・プラットホーム「Yammer(ヤマー)」を使用することで、社内メールを大幅に削減できたという。

 リドリー氏はこう述べている。「全体的には、われわれがデジタルな方法で運動を作り上げ、実際の人の移動が最低限になる方法で世界中の人々とつながることができるというのは、テクノロジーの最大の利点の1つだと思う」 (c)AFP/Richard Ingham