【1月11日 AFP】インターネットのドメイン名やIPアドレスを管理する非営利組織ICANNInternet Corporation for Assigned Names and Numbers)は12日、インターネットのドメイン名における「革命」を開始させる予定だが、これに対して国連や米議会などさまざまな組織が懸念を表明している。

 従来の「.com」に代わり、新たに会社名や機関名、都市名などを登録できる新サービスだが、国際赤十字(International Red Cross)や国際オリンピック委員会(International Olympic CommitteeIOC)はすでにそれぞれの団体名の登録を第3者に認めない方針でICANNの約束を取り付けている。

 ICANNのロッド・ベックストロム(Rod Beckstrom)最高経営責任者(CEO)は、アフリカ南部の部族長や中東の富豪一族らも参入に意欲を見せるこの新ドメインについて、「ドメイン名サービスの革命」と呼ぶ。

 新たに申請を受け付けるジェネリックトップレベルドメイン(GTLD)では、これまでの「.com」や「.org」に代わり、「.Apple」や「.IMF」、それに「.Paris」などの登録が可能になる。ICANNは、インターネットの大幅な拡大で新たなドメイン名が必要になったと説明している。世界のインターネットユーザーは20億人で、その半数はアジア地域だ。

■第3者によるドメイン名取得に懸念

 だが、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)など25の国際団体が先月、ICANNに対し書面で、自分たちの団体の名前が「誤解の招く恐れのある登録や使われ方」をされる可能性があると懸念を表明した。

 また全米広告主協会(Association of National Advertisers)、それにYMCAYoung Men's Christian Association)などの非営利団体も、米議会で前月開かれた公聴会でこの計画を批判した。

 ドメイン名を大量に買い占めて高値で売りつけようとする行為や詐欺の企てを阻止するための「防衛的登録」に、多額の費用がかかるのではないかとの恐れが広がっているのだ。

 登録費用は18万5000ドル(約1400万円)で、さらに1年あたり2万5000ドル(約190万円)がかかる。ベックストロムCEOも、サーバー費用やその他技術費、運営費をあわせれば新たなドメイン名を取得することは10年間で数百万ドル規模に上る出費になりうると認める。

■除外規定や審査委員会の設置で対応へ

 これに対してICANNは、標的にされやすい大組織を保護するための安全対策をすでに講じたと説明する。

 ジェーミー・ヘドルンド(Jamie Hedlund)副社長(政府関連担当)は、国際機関の名称は商標ではないものの国際協定で言及されている名称については商標と同様の保護を行う方針だと述べた。

「仮に誰かが『.unitednations(国連)』の登録を申請したとしたら、そのドメイン名を取得する権利がないから登録費用の18万5000ドルを無駄にしたことになる」とヘドルンド氏は記者団に語った。

 すでにIOCと国際赤十字は、ICANNと協議の末、自団体の名称を誰も登録することができないようにする規定を取り付けている。他の国際団体はこの2団体ほど迅速に対応をしなかったと、ヘドルンド氏は付け加えた。

 また、よく知られた商標やサービスマークを用いたトップレベルドメインの申請があった場合には、その商標の権利者は、知的財産専門家らが構成する委員会に苦情を申し立てることができ、委員会が是非を判断することになる。

「(申請者が)その単語を使う権利を保有していなければ、あなた(権利者)は極めて有利な立場にいることになる」とベックストロムCEOは述べ、「防衛的登録」の必要性はないと付け加えた。

■最大4000件の登録申請か

 ICANNは予測件数を公表していないが、専門家らは、1月12日から4月12日までの申請期間中に数百件~4000件の申請があると予測している。申請者のリストは5月に公表される。(c)AFP/Tim Witcher