【11月16日 AFP】14日に出荷が始まった米インターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)の新型タブレット型端末「キンドル・ファイア(Kindle Fire)」は、タブレット市場をけん引する米アップル(Apple)「iPad」の強力なライバルになりうるのか――専門家たちの意見は分かれているようだ。

 アマゾンは当初、15日にキンドル・ファイアの出荷開始を予定していたが、1日前の14日に前倒しした。ファイアは、最安モデルのiPadと比べても半値以下の199ドル(約1万5000円)という価格設定だ。

 キンドル担当副社長のデーブ・リンプ(Dave Limp)氏は、ファイアが早くも「アマゾン全商品のベストセラーになっている」と述べ、顧客からの反応が良いため「計画よりはるかに多く製造している」と語った。だが従来通り、アマゾンは販売実数を公表していない。

■「タブレット端末とは似てもにつかない」と酷評

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)のコラムニストで強い影響力を持つデビッド・ポーグ(David Pogue)氏は、一部消費者には200ドルという価格が魅力的かもしれないが、「ファイアはiPadのように垢抜けてもいなければスピードもない」と酷評した。

「指でスワイプ操作をするたびに、200ドルの値札を感じることになる」とポーグ氏は述べ、「(ファイアは)本物のタブレットのような多目的さとは、似てもにつかない」と付け加えた。

 さらに、「ファイアは秩序を壊す巨大な勢力になってよいはずだが、今のところはもっと洗練が必要。iPadや『本物の』アンドロイド(Android)タブレットを使っているのならば、ファイアのソフトウエアのひどさに狂乱することになるだろう」と述べた。

 また、ジョン・フィリップス(Jon Phillips)氏はテクノロジー雑誌「WIRED(ワイアード)」で、「ファイアは失敗作ではない。だが、ファイアの実際の処理能力や有用性は、人びとの期待にも応えていないし、世界最高峰のタブレット端末にも届いていない」と批評した。

「ファイアは7インチ板の形をもったショッピングへの扉としてはとても効果的。だが、動画再生やアンドロイドアプリ起動、アマゾンショッピングの他は、何一つ上手にこなすことはできない」

■支持者は「低価格」に注目

 一方、米ITブログサイトのギズモード(Gizmodo)のサム・ビドル(Sam Biddle)氏は、iPadに「ついにライバルが現れた」と述べ、アップルはファイアを「恐れるべきだ」と語る。

「ファイアで読む、見る、ブラウズする、聴くことは驚異的に簡単で楽しい」とビドル氏。「iPadほどパワフルだったり能力があったりはしないが、(ファイアの方が)値段もかなり安い」

 また、テクノロジー情報サイト「TheVerge.com」のジョシュア・トポルスキー(Joshua Topolsky)氏は、「(ファイアは)iPadキラーではないが、その値段にしては恐るべきタブレット端末だ」と位置づける。

「アクセスできるコンテンツの量や、コンテンツを入手する簡単さは、控え目に言っても特筆すべきものだ。きちんとした設計がされていて、ソフトウエアも、多少垢抜けていないとはいえ、この価格帯の他のあらゆる製品と比べて素晴らしい」

「考え抜かれたタブレット端末だ。ソフトウエアを改善するたびに、どんどん良くなっていくことは間違いない。完璧ではないが素晴らしいスタート。それに200ドルだ。アマゾンは今年の年末商戦はこれだけを用意すればいいほど」と、トポルスキー氏は評価した。(c)AFP/Chris Lefkow