【8月8日 AFP】米ラスベガス(Las Vegas)で開かれたハッカーの世界大会「デフコン(DefCon)」で6日、悪名高い国際的ハッカー集団「アノニマス(Anonymous)」の批判を展開したハッカーらの講演に、客席にいたアノニマスのメンバーが割り込み、デフコン史上最大の激論に発展するという場面があった。

■アノニマスは「ごろつき」

 ベンチャー企業のバックトレースセキュリティー(Backtrace Security)に所属する「ヒューブリス(Hubris)」氏と「アシェラ(Asherah)」氏は、アノニマスの「ごろつきのような態度」を非難し、無鉄砲なご都合主義をインターネット時代のアクティビズム(行動主義)だと主張しようとしていると批判した。

「アノニマスは、始まったときは良いアイデアだった。だが、いまや、それは暴力的に転落する一方だ。あっという間に道を踏み外し、今も悪化し続けているそれを頓挫させようと、われわれは取り組んでいる」(アシェラ氏)

 この発言に会場の聴衆は賛否両論に分かれ、客席からは歓声と罵声がわき起こった。

 アシェラ氏は、アノニマスのこれまでの歴史をひもとき、構成メンバーはハッカー集団「ラルズ・セキュリティー(Lulz Security)」と同じだと指摘。アノニマスのメンバーたちが、米SNS「フェイスブック(Facebook)」「Yelp」などで同一のハンドルネームでアカウントを取得していたためにメンバー特定ができたと明かす際には、アノニマスを笑い飛ばし、ののしり、公然と愚弄した。

 バックトレース社は、アノニマスのメンバーたちをビデオチャットに誘い、顔写真を保存したり、違法な悪ふざけについて詳しく語らせたりしたという。

■アノニマスメンバーが客席から登壇

 セッションが怒鳴り合いの激論になったのは、客席からアノニマスのメンバーたちが講演を遮り、さらに登壇してヒューブリス、アシェラ両氏との議論に加わったときだった。

 映画『Vフォー・ヴェンデッタ(V for Vendetta)』の主人公が付けていたのと似たマスクをかぶって現れたアノニマスのメンバーは、「私は、アノニマスの行いは全ての人にとって良いことだと信じている」と語り、大会場の片側から拍手で迎えられた。

 別のアノニマスメンバーは、クマのぬいぐるみのコスチュームで登場し、警察への情報提供者の名前やクレジットカード情報などの公開は、ネットワーク対策の改善を働きかける効果があると反論。「アノニマスと(内部告発サイト)ウィキリークス(WikiLeaks)が前年に協力して行ったことは、世界平和のため、あらゆる政府が過去1000年間に行ってきたことよりも多くのことを成し遂げた」と主張した。

 これに対しアシェラ氏は、アノニマスは「形をもたないモブ」に過ぎず、気分で行動して、後になってそれを主に行動主義の名目で正当化しようとしているだけだと批判。「アノニマスは、自らが戦うと誓ったモンスターそれ自体になってしまった。もしもアノニマスが本物の活動家集団として見られたいのなら、ごろつきとまぬけどもを排除する必要がある」と語った。

■数週間以内に「目を見張る出来事」が起きる?

 さらにヒューブリス氏とアシェラ氏は、入手した情報を米連邦捜査局(FBI)の捜査員と共有していると述べ、「今後数週間で、かなり目を見張るような出来事が起きるのを期待していてもいいでしょう」と発言した。「アノニマスは、誰にも身元がバレていないから、ばかなまねをしても平気だと思っている。残念ながら、真にアノニマス(匿名)なメンバーはあまり多くない。私はメンバーの多くの身元を知っている」(アシェラ氏)

 セッション終了とともに、アノニマス広告塔のグレッグ・ハウシュ(Gregg Housh)氏が壇上に小走りで駆け上がると、このセッションが撮影されたことを告げ、動画を加工して遊ぼうと仲間に告げた。

 一方のヒューブリス氏は、アノニマスのメンバーを公開討論の場に引きずり出したことをもって勝利を宣言した。

 またアシェラ氏は、バックトレースがデフコンのコミュニティーに歓迎されていると指摘し、既に悪いイメージを持たれているハッカーの立場をさらに悪くするアノニマスやラルズについて、不愉快に思っている人も多いと語った。「彼らは、人様のプールにおしっこをしてまわってるのよ。私たちは平和にハッキングをしていたいのに、あいつらが乗り込んできて、ハッカーを極悪人に仕立て上げているの」(c)AFP/Glenn Chapman