【4月19日 AFP】米アップル(Apple)の新型タブレットPC「iPad(アイパッド)」は、多くの人にとっては洗練されたマルチメディアエンターテインメント機器だ。だが、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin at Madison)のグレッグ・バンダーハイデン(Gregg Vanderheiden)教授は、iPadこそ会話によるコミュニケーションが困難な人々が待ち望んでいた安価な支援機器だと考えている。

■iPad+アプリで高額機器不要に

「脳卒中の後遺症で失語症になってしまった人がいるとしましょう。会話支援機器を購入すれば5000ドル(約46万円)もかかります。でも、iPadを買ってアプリケーションソフトをダウンロードしたら――ほら、これだけでコミュニケーションが可能になります」

 バンダーハイデン教授は、話すことができなかったり会話に不自由がある人々を支援する同大トレース研究開発センター(Trace Research and Development Center)のセンター長を務めている。

 同教授以外にも、比較的低価格なコミュニケーションツールとしてiPadに期待を寄せる人々は多い。米カリフォルニア州を拠点に、障害のある子どもや大人たちに支援機器の利用を促す活動をしているATAAlliance for Technology Access)のカレン・シーハン(Karen Sheehan)氏も、「iPadには注目が集まっている」と語る。

 脳卒中の後遺症に苦しむ人や脊髄(せきずい)損傷患者、脳性まひや全身が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者、さらには自閉症の人々――。本体価格がわずか499ドル(約4万6000円)~829ドル(約7万6000円)のiPadの活用によって恩恵を受けると考えられる人たちは多い。

■大きな画面も利点

 すでに、iPhoneiPod Touch向けに会話支援ソフト「Proloquo2Go」を販売するアシスティブウエア(AssistiveWare)社が、同ソフトのiPad版の提供を189.99ドル(約1万7000円)で開始した。このソフトは、単語を表した図像を選択するか単語を直接タイプ入力して、テキスト音声化技術で読み上げる機能を提供するものだ。

 シーハン氏は、iPhoneやiPod Touchは画面が小さく、運動能力の制限された人にはアイコンが小さすぎてちゃんとタップできないという問題があったと指摘。大きなタッチスクリーンを搭載したiPadなら「簡単に『ジュースが飲みたい』とか『映画が観たい』と伝えられる」として、より幅広い人々に利用が広がる可能性に期待を寄せた。(c)AFP/Chris Lefkow