【3月13日 AFP】故毛沢東(Mao Zedong)主席ならば達筆な書の腕を振るい詩文をしたためただろうが、全国人民代表大会(National People's Congress、全人代=国会)の議場からノートパソコンでマイクロブログを書き込む毛主席の孫・毛新宇(Mao Xinyu)氏(40)は、まさしく21世紀の申し子だろう。

 前週5日、人民大会堂(Great Hall of the People)の出口を間違えて報道陣に取り囲まれ、頑健な外見からは意外にも側近に「救出」された毛氏だが、自分が日々思うことを140字以内で簡潔に発信している。

 毛氏は、中国を一党支配する共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)が運営するマイクロブログ、人民微博(Renmin Weibo)のスターブロガーの1人だ。

 インターネット・ユーザーを世界各国で最多の3億8000万人以上も擁する中国では今、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)人気に火がついているが、「ツイッター(Twitter)」や「フェースブック(Facebook)」など外国系SNSへのアクセスは政府によって遮断されており、中国ユーザーたちの活躍の場は国内のSNSに限られている。

■4日でフォロワー900人

 人民解放軍の軍事科学院(Academy of Military Sciences of the People's Liberation Army)の研究者である毛新宇氏は、全人代に政策「助言」を行う機関とされる中国人民政治協商会議(Chinese People's Political Consultative ConferenceCPPCC)の全国委員でもある。

 この政治協商会議は、2000人いる委員たちにレノボ(Lenovo)製のノートパソコンを無料配布し、ブログを始めさせた。中には映画監督の張芸謀(Zhang Yimou、チャン・イーモウ)氏や五輪の陸上男子ハードル金メダリスト、劉翔(Liu Xiang、リュウショウ)氏もいる。委員たちは会期後もそのままPCを使用できる予定だ。

 毛氏がブログを開設すると4日間のうちに900人を超えるフォロワーが集まった。コメントは「痩せたほうがいい。革命のための資本は体だ」という辛らつなものから、「中国人民は毛主席を決して忘れない。孫であるあなたにも期待している。どうぞ健康でご活躍されますように」という美辞麗句までさまざまだ。

■検閲でアカウント閉鎖も

 もちろん委員たちも、中国政府の厳格なインターネット監視から逃れはしない。よって、共産党の決定をほとんど形式的に承認するだけの全人代同様、彼らのマイクロブログの書き込みも、当たり障りのない内容になっている。

 一方、人気ポータルサイト「新浪網(Sina.com)」で、08年5月の四川大地震で多くの学校が倒壊したことについて、透明性のある回答を要求した著名なアーティスト・建築家で、政治活動も活発な艾未未(Ai Weiwei、アイ・ウェイウェイ)氏のアカウントは9日、閉鎖されてしまった。

 中国でツイッターが閉鎖されたのは前年7月。新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で発生した暴動の扇動、組織にインターネットや携帯電話が大きな役割を果たしたとして、当局の標的とされた。

 インターネットを通じて、国民の政治的な力が強化されることを警戒する中国政府の意向を反映し、国会内にはインターネットを規制する法を提案する声もある。ある議員は、オンライン・ゲームの利用を週末に限定し、「低俗」とみなされる表現を徹底的に禁じる法案を用意した。しかし国内のチャット・フォーラムでこの法案は、冷笑を買っている。(c)AFP/Francois Bougon