【1月29日 AFP】米アップル(Apple)の新型タブレットPC「iPad(アイパッド)」は、世界を画期的に変える製品なのだろうか?新製品発表から一夜明けた28日、その評価は分かれている。

 携帯音楽プレーヤー市場で70%を超えるシェアを誇るiPodや、スマートフォン市場を根本から変えたiPhone(アイフォーン)――アップルはこれまで、数々のヒット商品を世に送り出してきた。だが、iPadがそれら「先輩」と同じように大ヒットを記録できるのか、IT専門家の間でも見解は割れている。2010年に最もよく売れる電子製品になると評価する評論家がいる一方で、発表早々に不満の声も上がった。

■「機能の少なさ」に不満

 カメラがない、USBポートがない、一度に複数のアプリケーションを実行できない、電話として使えない、動画やゲームに広く使われているアドビシステムズ(Adobe Systems)のフラッシュ(Flash)をサポートしていない、などが主な不満として上がっている。

 アップルのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)最高経営責任者(CEO)も27日の発表イベントで、iPadはノートパソコンと高機能携帯電話(スマートフォン)の中間に位置づけられるまったく新しい製品分野だと説明し、1つの賭けであることを認めている。

■iPhoneの方がマシ?

「多くのアップルファンが期待していたほどの革新的な発明ではない」――。IT情報ブログ、マッシャブル(Mashable)のサミュエル・アクソン(Samuel Axon)氏は、iPadに失望した1人だ。「コンテンツ業界の常識を覆すものでもなく、メインマシンにもなり得ない。ちょっとサイズが大きて機能が増えたiPhoneとすら言えない」

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)のITコラムニスト、マイケル・ヒルツィック(Michael Hiltzik)氏も、「iPhoneから電話機能を外して少し大きくしたような感じ」と評した。

 独紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine)のIT関連ブログは、発表前の数か月にわたって過熱気味に高まっていたファンの期待感を満足させるのは難しいと指摘。「現在のスペックでは、ネットブックやスマートフォンと比較して利点は少ない」と述べ、電子書籍端末としての機能についても、ネットで無料で読める新聞記事にわざわざお金を払ってiPadで読む消費者がいるだろうかと疑問を投げかけた。

■出版業界では期待も

 そんな消費者はきっといる。そう期待するのは、ネット上の記事に課金している少数の新聞社の1つ、英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial TimesFT)のジョン・リディング(John Ridding)CEOだ。

「iPadは歓迎すべき新発明だ。出版社にとって重要な販売チャネルとなる可能性を秘めている。豊かなユーザー体験をもたらすとともに、当社にはよりインタラクティブでダイナミックなコンテンツを顧客に提供する手段を提供してくれる。iPadの登場が、携帯デジタル端末の進化における新たなステップになることを望んでいる」

 スペイン紙パイス(El Pais)は、デジタル時代に苦闘するコンテンツ制作者に新たな地平を切り開いたと賞賛。「真の革命は技術面ではなく、文化的・企業家的な側面でもたらされるだろう」と論評した。

■「デジタル時代の理想のアイテム」になり得るか

 IT情報ブログGigaOmのオム・マリク(Om Malik)氏はiPadについて、「ゲーム、音楽、写真、動画、雑誌、新聞、電子書籍などのデジタルメディアを消費するためのデバイス」だと捉える。「爆発的に増え続けるデジタルコンテンツを片っ端から摂取したい、そんな人たちを助ける、現代社会にとって理想的なアイテムだ」

 いずれにせよ、最終的な評価を決めるのは消費者だ。自分自身で判断したいという人は、499ドル(約4万5000円、エントリーモデルの価格)を用意して2か月後の発売を待つ必要がある。(c)AFP/Chris Lefkow