【1月27日 AFP】経営不振にあえぐ米国の新聞社や雑誌出版社は、米アップル(Apple)が27日に発表するとみられ、「ジーザス・タブレット」などと呼ばれている同社の新製品に、復活の望みを託している。

 スティーブ・ジョブス(Steve Jobs)アップル最高経営責任者(CEO)は、ノートPCサイズの「iPod Touch」のような製品を発表するとみられる。

 これに対し、同社のiTunesが音楽で、また、iPhoneとiPod Touch用ソフトの専用サイト「App Store」がミニ・ソフトウェアで起こしてきたような改革を、この新製品が新聞業界に起こすかもしれないとの期待が高まっているという。

 米誌タイム(Time)元編集者で、現在オンラインサイト「FLYPmedia」の編集長を務めるジム・ゲインズ(Jim Gaines)氏は、「注目に値する製品だ」と語る。「出版業界の救世主だとは思わないけれど、この製品の後継機がそうなっていく可能性はとても高い」

■アップルが成功したコンテンツの有料化

 実は、新製品そのもの以上に、アップル社がこれまで成功を収めてきた、自社製品とコンテンツ配信とを結びつけるその戦略にこそ、注目に値するものがあるのかもしれない。

 新聞社や雑誌社は、ネット文化との関係を維持しようとしてデジタル化を推進した結果、ネット上で画像や記事が無料で閲覧し共有できるようになり、出版広告収入を減らしてしまった。

 一方、アップルは、iPhoneやiPod Touch用の有料のアプリやゲーム、コンテンツなどが購入される環境を作り出すという方向性を切り開いた。

 報道によれば、アップルはオンラインニュースサイトや雑誌、書籍出版社と、これまでくり返し交渉を続けてきた。27日のイベントでは、出版コンテンツ向けのiTunesのようなサービスの立ち上げも発表されるかもしれない。

■出版の未来はスマートフォンと電子書籍端末

 出版物の発行部数などを調査する米ABC(Audit Bureau of Circulations)によると、出版社は、スマートフォン(多機能携帯電話)と電子書籍端末に、未来の方向性を感じているという。

 ABCの調査によると、出版物の配信方法として、3年以内にスマートフォンが不可欠になるとの回答は、回答者の半数以上に上り、また、回答者の約42%が、3年以内に電子書籍端末も不可欠になると答えた。

■ユーザーは有料化の波をどう見るか

 米ボストン(Boston)のノースイースタン大学(Northeastern University)でジャーナリズムを教えるダン・ケネディ(Dan Kennedy)助教授は、デジタルの世界にイライラさせられていた新聞社や雑誌社が、ネット購読者への「有料サービス」に力を注ぐ可能性は高いと述べる。

 しかし、仮に、アップルのタブレットPCの価格が高く、通信事業者の月額費用も同時に支払わうことになれば、利用者のコンテンツ購入意欲は削がれることになるだろう。

 ケネディ氏は、アップルのタブレットPCに「ほとんど興味がない」という。「出版社の中には、(アップルのタブレットPC発売を)インターネットを初めからやり直して、閉鎖されたシステムとして作り直すチャンスだと考えている会社もある」と述べるケネディ氏は、そのような取り組みは、自由なインターネットにおいて非常に限定的な成功しか収めないだろうとの見解を示した。(c)AFP/Glenn Chapman

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