【12月27日 AFP】21世紀への変わり目は「Y2K」問題に揺れ、「ドットコム・バブル」で大騒ぎしながら迎えたものの、米ソフトウエア大手マイクロソフト(Microsoft)の創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏が「デジタル・ディケイド(Digital Decade)」と呼んだこの10年は、絶え間ない技術革新の時代だった。

 2010年を前に過去10年間の技術の飛躍を年代順に俯瞰した米ハイテク情報誌「WIRED(ワイアード)」ニューヨーク(New York )編集部のジョン・アベル(John Abell)編集長は「インターネット、そしてデジタルの世界全体が驚くほど活気づいていた10年だった」と評する。「われわれがいるところで、まったく非デジタルな世界などもうない。たとえそれがデジタル機器だとは意識していなくても、おばあちゃんから機械嫌いまで、みんなデジタル機器やツールを使っている」

■ニューヨーク・タイムズの「この10年のデジタル・リスト」

 米紙ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のテクノロジー・コラムニスト、デビッド・ポーグ(David Pogue)氏は、過去10年間に登場し、世の中に多大な影響をもたらしたデジタル製品やツールを挙げた。

 一番最初に名前が挙がったのが2001年に登場した米アップル(Apple)のデジタル携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」だ。「音楽の流通と市場に真の革命を引き起こした」という理由だ。

 もうひとつ同氏が一押ししたのは、ビデオを撮影してすぐにウェブにアップロードできる米ピュア・デジタル・テクノロジーズ(Pure Digital Technologies)の小型ビデオカメラ「フリップ(Flip)」。フリップは発売から2年でビデオカメラ市場の3分の1を獲得し、ビデオテープ・カメラを完全に駆逐してしまった。

■スマートフォンの石器時代

 ポーグ氏のリストでさらに「運転の仕方を大変革した」GPS(全地球測位システム)と並んで高い順位につけるのが、アップルの「iPhone(アイフォーン)」など、数千種類のアプリケーションを駆使できるタッチスクリーン方式のスマートフォンだ。ポーグ氏は「(スマートフォンは)これまでになくコンパクトで薄いポケット・コンピューターになっている。いつも携帯し、常時インターネットに接続できる。これも革命的な環境だといえる」。

 さらに特筆すべきは、iPhoneが登場してからまだ2年しか経っていない点だ。ポーグ氏は、米インターネット検索大手グーグル(Google)の携帯電話向けオープンソース基本ソフト「アンドロイド(Android)」や、米携帯情報端末(PDA)大手パーム(Palm)のタッチスクリーン多機能携帯電話、そしてiPhoneなどが、今後5年でどう変化するかが楽しみだという。

「今はまだスマートフォンの石器時代。わたしたちは今はとても進んでいると思っているけれど、まだまだだろう」

 音楽や映像と並び読書の世界にも画期的なデバイスが誕生した。米インターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)の電子書籍端末「キンドル(Kindle)」だ。2007年に米国で発売が開始されると、デジタル書籍市場では競争の火ぶたが切って落とされた。

■発信・表現・コミュニケーション、人同士のつながりに革命

 この10年間はもちろん、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の爆発的成長やワイヤレス通信の充実、クラウド・コンピューティングの台頭などウェブの世界が地盤ごと変化した時代でもあった。

 先のワイアードのアベル編集長は、グーグルが検索や広告だけではなく、「考えつくあらゆるものに手を伸ばし、わたしたちの生活の中心にまでなった」と言う。

 またポーグ氏は、90年代にはまだ「オタク」のものだったウェブページ作りが、この10年で万人に開かれてきたと指摘する。

 オンライン百科事典サイト「ウィキペディア(Wikipedia)」の英語版誕生が2001年、SNSの「マイスペース(MySpace)」が2003年、「フェースブック(Facebook)」は2004年、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」が2005年、マイクロブログサービス・ツイッター(Twitter)が2006年と年を追って新メディアが現れた。

Web 2.0の素晴らしいところは、簡単さだ。誰でもただ文章を打ち込めばいいだけで、特別な才能なんて要らない。要るのは自分の意見だけ、というところだ」

 さらに目覚しい点は、同じ興味や関心をもつまったく会ったことのない人同士を、こうしたツールがつないだことだとポーグ氏は言う。「どんなに狭い興味でさえも、だ。(SNSなど)こうした方法以外では絶対につながらない人たちだったろう」
 
 こうした過去10年の動きの大きな下地を用意したのは2001年、「Moving Into the Digital Decade(デジタル時代の到来)」と題したエッセイを発表したビル・ゲイツ氏だ。「どこにいるかに関係なく、誰があなたにコンタクトできるか、あるいは誰があなたの情報にアクセスできるかを自由にコントロールし、公にもプライベートにも、好きなように生きる力を手にするだろう」とゲイツ氏は書いた。

 しかしポーグ氏いわく、次の10年のテクノロジーは「予測しても間抜けにしか見えないだろう。ゲイツ氏以外はね」(c)AFP/Chris Lefkow