【12月1日 AFP】映像はやや粒子が粗く完璧な映像とはいえないが、カナダ・トロント(Toronto)市のその女性警官は、まっすぐカメラを見つめて緊急の捜査協力を求めた。

 彼女が協力を求めたのは、悪質な性犯罪事件の容疑者の捜索。黒のダウン系ジャケットなど特徴の詳細を公開し、ずんぐりした容疑者の似顔絵も映し出した。

 この捜査はインターネット上で絶大な人気を誇る動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」と、旧来の警察任務とを結びつける動きの一環だ。人気ミュージシャンたちの演奏ビデオから数クリックで飛べるサイト上で、こうした活動が行われている。

 国際刑事警察機構(インターポール、Interpol)も、こうした捜査手法に注目している。

 新しいメディアを利用した捜査への移行は避けられない、と仏リヨン(Lyon)にあるインターポール本部で刑事事件情報を担当するDimitrios Souxes氏は語る。「そうした利用は成功している。(メディアの)発達に付いて行かなければ、時代に取り残されてしまう」

 インターポールは児童に対する性犯罪の捜査で、前代未聞のネットを使った国際的な捜査協力呼び掛けに踏み切り、これまでに容疑者2人が逮捕されている。またユーチューブだけでなく、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)大手のフェースブック(Facebook)やマイスペース(Myspace)にもルワンダ内戦の虐殺に関する容疑者らのビデオ映像を公開している。インターポールはこれらのサイトを常時監視しているという。

 インターネットは目撃情報や容疑者の足取りについての情報の通報窓口として、あるいは指名手配写真やビデオ映像を公開するメディアとしての利用が考えられる。容疑者が公開情報を目にすることのリスクは避けられないが、それでも捜査にもたらす利点のほうが大きいという。

「リスクはあり、それを避けることはできないが、インターネット上の情報には想像を絶するほど大勢の人がアクセスしている」とSouxes氏は語った。(c)AFP/Justine Gerardy