【9月24日 AFP】市民が無料または格安で利用できる公衆無線LAN(Wi-Fi)の導入を打ち出 した米国の自治体が、次々に計画の中止や縮小に追い込まれている。

 サンフランシスコ(San Francisco)とシカゴ(Chicago)はこのほど相次ぎ、市営の無線LAN導入計画を突然、中止した。共同で計画を進めるはずだったインターネット接続プロバイダー大手のアースリ ンク(Earthlink)が、新規プロジェクトの縮小を決めたのが原因だ。

 サンフランシスコでは、検索大手のグーグル(Google)がアースリンクとともに、市全域にまたがる無線LAN計画を後押しし、ネット広告が表示される場合は無料、表示されない場合は有料でサービスを提供するはずだった。しかし契約がまとまる前にアースリンクが撤退してしまった。

■無線LAN計画見直し迫られる自治体

 シカゴも8月31日、計画の「見直し」を行うと発表。提携候補となっていた2社のプランでは、ネットワーク構築のためには市による「巨額の資金提供」が必要になることから折り合いがつかなかった。

 無線LANは、低所得者層にも比較的低料金でインターネットを利用してもらうための手段として、全米の自治体が競って導入計画を打ち出していた。

 しかし、多数の中継基地が必要で経費がかさむ半面、利用者は伸び悩み、採算が合わないと判断する自治体や企業が増えているという。

 自治体のプロジェクト情報サイト「MuniWireless」によると、公衆無線LANを計画または導入している自治体は400を超えているというが、実際に稼働しているのはごくわずかで、多くは警察の仕事など限られた目的の接続が中心になっているという。 

■フィラデルフィアは半分網羅

 一方、他都市に先駆けて計画を進めてきたフィラデルフィア(Philadelphia)の無線LANは、既に市全域の半分以上を網羅している。非営利組織のワイヤレス・フィラデルファイア(Wireless Philadelphia)は低所得者層向けに、ノートパソコンと無線LAN接続をセットにして月額料金約10ドル(約1150円)で提供。無料で接続できる公園も多く、一般ユーザーは月額20ドルを払えば市全域でサービスを利用できる。提携しているアースリンクの組織再編の影響は受けていないという。

 アースリンクは「従来の自治体無線LANでは当社がすべてのリスクを負担してきたが、今後はそのような形で当社の資本を投じることはない」と言明。フィラデルファイア市とのこれまでの契約は守るが、今後は「古いビジネスモデル」による新規プロジェクトは一切受け付けないという姿勢を示した。

 しかし自治体の公衆無線LAN計画は頓挫しても、インターネットへの無線接続は増えており、何らかの形で今後もネットワークは拡大する見通しだ。

 中でも有望視されている新技術の「ワイマックス(WiMAX)」は、各中継基地から電波が届く範囲が広く、米携帯電話大手スプリント・ネクステル(Sprint Nextel)とクリアワイヤ(Clearwire)は、国内で大規模なワイマックスの導入を計画しているという。(c)AFP/Rob Lever