【8月19日 AFP】ある米国人ハッカー開発のプログラムが、米中央情報局(CIA)や政治関連団体による利用者参加型オンライン百科事典ウィキペディア(Wikipedia)への書き込みを明らかにした。

 ウィキペディアは、ウェブサイト上の文書をユーザーが自由に書き換えられるオンライン百科事典。誰でも自由に書き込みや編集をすることが可能だが、事実誤認については、より深い知識を持ったユーザーが訂正していくという原則がある。

 大学院生で自称ハッカーのバージル・グリフィス(Virgil Griffith)さんは、自身が開発したプログラム、「ウィキスキャナー(Wikiscanner)」を用いて約300件の書き込みの発信源をCIAのコンピューターだと特定した。変更が行われたトピックスには、「イラン大統領」、「アルゼンチン海軍」、「中国の核兵器」などが含まれているという。

 CIA報道官はAFPの問い合わせに対し、「CIAが保有するコンピューターから書き込みが行われたかどうかは確認できないが、当局は常に責任あるコンピューターの使い方を求めている」と述べた。

 ウィキペディアへの書き込みの発信源は、固有のIPアドレスを使って特定される。この方法によりウィキスキャナーが発見した変更点の多くは単語のつづりを直すなどの些細な訂正だったが、その一方で望ましくない情報の削除や、悪口の書き込みなども行われていた。

 米民主党関係者は、保守派で知られるラジオのトークショーの司会者の肩書きに「石頭」と書き込み、さらに同番組の視聴者を「能無し」とばかにした。一方で、イラクのバース党(Baath)についての項目では、米軍によるイラク侵攻を推し進めた「占領軍」と書かれた言葉が「解放軍」と訂正されており、その発信源が米共和党のコンピューターだと判明。また、ロイター通信(Reuters)が所持するコンピューターからは、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領のプロフィールに「大量殺人者」と書き込まれていた。

 グリフィスさんによると、政治家が都合の悪い情報を取り繕ったり、企業が競合相手の情報に批判的な情報を足すことはよくあることだという。また、どちらも重要な情報を削除する傾向が見られた。

「このような技術を使うことによって『荒らし』や『デマ』に対抗できれば、ウィキペディア上の議論を呼ぶ話題はさらに信頼性を増すだろう」とグリフィスさんは期待を寄せる。(c)AFP/Glenn Chapman