【6月26日 AFP】「ビデオゲームは中毒になる」、保護者なら当然視するこの考え方に、米国医師会(American Medical AssociationAMA)が待ったをかけた。

 医師会は当初、「インターネットゲーム、ビデオゲームの中毒を精神障害とみなすべき」と勧告するレポートを準備したが、年次総会前にシカゴで開催された医師会代表者による委員会では反論が相次ぎ、改訂されたレポートの主張は著しく弱められる結果となった。

 委員会では、「ゲームのやり過ぎが病的なギャンブル中毒と類似している」という主張に十分な科学的証拠があるのかどうか疑問視する声が上がった。

 また、「子どもがテレビを見る時間を1日1時間から2時間に限るという家庭のルールにはビデオゲームの時間も含めるべき」と勧告するには、一層の研究が必要との主張も出された。

■当初のレポートでは、ゲームのしすぎによる弊害
 
 当初、今週予定されている米国医師会の総会のために準備されたレポートには、ゲームのやり過ぎがもたらすさまざまな弊害を示す研究が紹介されていた。

 ゲームのやり過ぎは、子どもの中に攻撃性と暴力的な振る舞いを引き起こすと主張が盛り込まれていた。

 ゲームがてんかんを引き起こす可能性は10万人に1.5人の割合に達し、ゲームのやり過ぎは肥満を促し、反復性のストレス障害を引き起こすという研究結果も紹介された。

 さらに親なら誰でも実感するとおり、ゲームのやり過ぎは子どもが宿題をするのを妨げ、家族とのふれあいを減らすことも指摘された。

 英国の研究者らは、ゲームをする子どもの12%は世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の基準でいう中毒状態にあると指摘、また、米国の研究者らは、10~15%はゲームのやり過ぎにより変調を来していると指摘した。

■改訂版「ゲーム中毒認定は時期尚早」

 しかし、「ゲームが長期的に攻撃的な性格をもたらすという主張同様に、ゲームのやり過ぎを中毒であると結論づけるには、まだ研究が不十分である」とレポートは結び、委員会は「中毒は複雑な病気で、インターネットゲーム、ビデオゲームがもたらす問題を中毒と正式に認定するのは時期尚早」と結論づけた。

 改訂されたレポートは、子どもの保護者と医療関係者に、ゲームが持つ潜在的な危険性を警告することを勧告するとともに、『精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)』の改訂作業を進めている米国精神医学会(American Psychiatric AssociationAPA)に提出される予定。
 
 ゲーム中毒を精神障害と定義した場合、保険会社がその治療費を保障すべきかという問題、および、ゲーム中毒患者を診る医師のための治療と薬処方のガイドラインをつくる必要が生じてくる。(c)AFP