【8月27日 AFP】海岸線を保護し、魚のすみかを提供する海草の回復に、ラッコが一役買っている可能性があるとの研究論文が26日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)の研究チームは、カリフォルニア州最大の河口地帯、エルクホーン湿地帯(Elkhorn Slough)に生育する海草とラッコの生息数を数十年にわたって記録した。そのうち、ラッコが生息していなかった1971~76年の間と、ラッコが再び生息し出してから約20年経った2005年~09年の間を比較したところ、ラッコが生息するようになってから海草の数が回復していたことが分かった。

 ラッコが生息することで、その餌であるカニの数と大きさが一定に抑えられた。一方、カニの餌であるウミウシは、その主要な天敵が減少したことで数が増え、餌である藻類の減少につながった。海草の成長を妨げる藻類が減少したため、清潔で健康な海草が育つようになった。

 つまり、生態系の頂点にいる動物が底辺にいる植物を救い、しかもそれがより健康に成長することを助けたことになる。

 論文は、「われわれの発見は、自然は主にボトムアップコントロールで成り立っているとする観点から離脱した。この観点は30年以上もの間、海草の損失を説明する支配的な推論だった」と述べている。

 これらの海草は、ニシンやオヒョウ、サケなどの稚魚のすみかとなる。また、海岸線を嵐や荒波から保護し、周りの環境から排出された有害な二酸化炭素を吸収する。有害物質を含んだ汚水が農業施設や都市から排出されると、それを餌にする藻類が急激に繁茂し、十分な日光が当たらなくなった海草は弱体化する。

 カリフォルニア大学サンタクルーズ校博士課程のブレント・ヒューズ(Brent Hughes)氏(生態学・進化生物学)は、「こうした重要な沿岸の生態系を、われわれは失いつつある。それは主に、栄養負荷のようなボトムアップ効果に関連している。われわれの研究で、これらの生態系は、その頂点にいる捕食動物の減少によって、トップダウン現象にも見舞われていることがわかった」と語っている。(c)AFP