【8月26日 AFP】中国などの国々で数百万人が危険にさらされているヒ素による地下水汚染の存在を予測するためのモデルを開発したという研究報告が22日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 欧州と中国の研究者らが発表した論文によると、この技術は、汚染問題が多数の人々に影響を及ぼす地域に適用でき、他の汚染物質にも応用が可能という。さらには、この手法により、危険な化学物質を追跡調査する関係当局の時間と費用の節約が期待できるという。

 ヒ素中毒の事例は、バングラデシュなど東南アジアの国々で広く報告されている。中国では、ヒ素中毒は1970年に最初に発見され、中国当局は1994年にヒ素中毒を風土病の1つと発表した。

 ルイス・ロドリゲスラド(Luis Rodriguez-Lado)氏の研究チームが開発した新しい予測モデルは、中国政府が多額の費用を投じて実施した大規模なスクリーニング検査活動の結果を基に構築されている。同政府はこのスクリーニングで、2001年から2005年にかけて個々の井戸を検査した。

 予測モデルは、詳細なスクリーニングによる検査データと、湿度、土壌塩分、地形図などの地理空間情報を組み合わせて使用している。さらにモデルは、人口データと、当該地域が高リスクか低リスクかを類別するためのヒ素濃度の閾(しきい)値を考慮に入れている。

 予測モデルは、個々の井戸のスクリーニングに比べて高効率かつ低費用だが、スクリーニングの代用にはならない、と研究チームは強調している。地下水の実地検査はやはり実施する必要がある。

 研究チームは、高リスク地帯とすでに判明している地域だけでなく、華北平原(North China Plain)の一部の省や四川(Sichuan)省中部などを含む新たな地域も特定した。

 中国では、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)が規定した最大閾値を超える濃度のヒ素で汚染された地下水を摂取する危険にさらされている人々の数は約1960万人に上る、と研究チームは試算している。

 ヒ素を長期間摂取すると、皮膚の過度の色素沈着や、肝臓や腎臓の疾患、がんなどを引き起こす恐れがある。

 地下水汚染は、地下深くの堆積鉱床や火山岩などに含まれるヒ素が地中の帯水層に浸出して発生する。

 この予測モデルは、ヒ素以外の汚染物質の検出にも応用できると研究チームは考えている。

 ロドリゲスラド氏は「われわれの研究が、飲料水の水質は重要な問題であること、また、この種の研究が数百万の人々の健康を改善するための防止策を講じる助けになることを強調するために役立つ可能性があると期待している」と述べている。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI