【8月19日 AFP】世界の沿岸部に位置する136の大都市は、洪水の防止策を大幅に強化しない限り、洪水による年間被害総額が2050年までに1兆ドル(約100兆円)に達する恐れがあると警告する研究論文が18日、英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された。

 世界銀行(World Bank)の研究チームがまとめた論文によると、米国のマイアミ(Miami)、ニューヨーク(New York)、ニューオーリンズ(New Orleans)と中国・広州(Guangzhou)の4都市を合わせた現在の年間被害額は約60億ドル(約6000億円)に上っており、損失額の43%を占めているという。

 研究チームは、都市の人口増加と、異なる水準の海面上昇、防止策の強化、地盤沈下に基づく被害リスクのシナリオを作成した。

 各都市が洪水リスクを現在の水準内に抑えるために防止策を改善すると仮定して、都市の人口および都市に蓄積された資産の増加の予測値だけを考慮した場合、2050年までに年間の被害額が現在の9倍の520億ドル(約5兆2000億円)に達するという。

 また、気候変動に起因する海面上昇と地盤沈下の影響を追加した場合、年間被害額は600億ドル(約6兆円)から630億ドル(約6兆3000億円)の間にまで増加する。

 さらに、最悪のシナリオの場合、「(洪水の防止策を)何もとらなければ、平均の被害額が2050年までに大幅に増加することが予測され、136都市の年間の被害総額は1兆ドル以上にまで増加する」と論文は述べている。

■「洪水防止策をとらない手はない」

 防止策を強化した場合に予測される2050年の年間被害額は、高い都市から順に、中国・広州(132億ドル(約1兆3200億円))、インド・ムンバイ(Mumbai)(64億ドル(約6400億円))、インド・コルカタ(Kolkata)(34億ドル(約3400億円))、エクアドル・グアヤキル(Guayaquil)(32億ドル(約3200億円))、中国・深セン(Shenzhen)(31億ドル(約3100億円))となっている。

 この数字は、広州は2005年の被害額に対して11パーセント増、コルカタは24パーセント増に相当する。

 一方、論文は、136都市の洪水防止策の強化に必要な費用を、被害額の試算値を「はるかに下回る」年間約500億ドル(約5兆円)と試算し、「沿岸部の都市では、洪水防止策をとらないという選択肢はあり得ない」と付け加えている。(c)AFP/Anthony LUCAS