【7月15日 AFP】スイス北西部のミューレベルク(Muehleberg)原子力発電所の近くにあるビール湖(Lake Biel)の堆積物から、放射性物質セシウム137が検出されたと、現地の日曜紙ル・マタン・ディマンシュ(Le Matin Dimanche)が14日報じた。湖の水は飲料用としても用いられている。同紙によれば科学者らは健康への影響はないと述べているが、原発の安全管理体制や透明性に懸念が持ち上がっている。

 ビール湖でみつかったセシウム137は、首都ベルン(Bern)の西方17キロメートルにあるミューレベルク原発の排水に含まれ、2000年ごろからアーレ(Aar)川に放出され、20キロ下流のビール湖に堆積していったとみられる。ジュネーブ大学(Geneva University)の地質学チームが2010年、放射能とは無関連の研究プロジェクトの現地調査中に偶然セシウム濃度の上昇に気付き、バーゼル(Basel)で化学分析を行った結果、セシウム137が検出されたという。

 同紙によると、1972年に稼働を開始したミューレベルク原発では、年数回に限って低レベルの放射性物質を含む汚染水の外部放出が認められていた。しかし、高濃度のセシウム137が10年以上前から近隣の町の飲料水の68%をまかなうビール湖に排出されていたことについては、原発も監督当局も一切情報を開示しておらず、政治家らや環境保護団体は怒りをあらわにしている。

 スイス議会は、2011年の福島第1原発事故を受け、2034年までに国内5か所の原発を段階的に停止する方針を決定している。(c)AFP