【7月8日 AFP】太陽エネルギーのみで飛行する有人ソーラー飛行機「ソーラー・インパルス(Solar Impulse)」が6日深夜(日本時間7日昼)、米東部ニューヨーク(New York)のジョン・F・ケネディ国際空港(John F. Kennedy International Airport)に着陸し、5月3日に開始した米国横断飛行の全区間を完了した。

 左翼の下側の布地が長さ2.5メートルにわたり裂けていることが判明したため、同機は当初予定よりも早い午後11時11分に着陸した。

 操縦士のアンドレ・ボルシュベルク(Andre Borschberg)氏は駐機場でチームメートのベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏と再会し、2人は満面の笑みを浮かべて写真撮影に応じた。2人は1飛行区間ごとに交代で操縦を担当していた。

 ソーラー・インパルスは単座で、長さ63メートルの翼に搭載された太陽電池(ソーラーセル)の電気で駆動するプロペラ4個で飛ぶ仕組み。この日は夜明け直前に、首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)近郊のダレス国際空港(Dulles International Airport)を離陸した。

 ボルシュベルク氏は18時間23分に及んだフライトの後、記者団に対して「左翼の損傷のため、この最終区間は特に難しかった」と語った。また、今回の挑戦により「(環境への負荷が少ない)クリーンな技術や再生可能エネルギーの限界が、前代未聞の水準まで高まった」とコメントした。

 米国横断飛行は西部カリフォルニア(California)州サンフランシスコ(San Francisco)近郊を起点に、アリゾナ(Arizona)州フェニックス(Phoenix)、テキサス(Texas)州ダラス(Dallas)/フォートワース(Fort Worth)、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)、オハイオ(Ohio)州シンシナティ(Cincinnati)、ワシントンD.C.の順に着陸してきた。この日は航空交通の混雑のため、操縦士のボルシュベルク氏がニューヨーク市上空の通過を認められるまで、同市近くの大西洋上空で数時間の旋回飛行を余儀なくされる一幕があった。

 ボルシュベルク氏とピカール氏のチームは、現行機種「HB-SIA」を近く引退させ、第2世代機「HB-SIB」の試験飛行を来年実施する方向で準備中。ピカール氏によると、HB-SIBの機体は従来機より10%大きく、出力や信頼性が強化される上、自動操縦機能やトイレが搭載される。これにより、2015年に予定される世界一周飛行への挑戦に必要な4~6日間の飛行が可能になるという。

 ソーラー・インパルスは以前にも、欧州やアフリカなど世界各地で記録を打ち立ててきた。(c)AFP