【6月17日 AFP】中国は前週、汚染物質の排出削減と地方自治体当局にその執行の責任を負わせるとする新たな大気汚染対策を発表したが、専門家らは17日、この対策では大気汚染レベルを基準の許容値に戻すまでに、最高18年を要する可能性があるとの見解を示した。

 大気汚染問題をめぐり国民の不満が各地から漏れ聞こえる中、北京(Beijing)市内では今年、粒子状物質レベルが世界保健機関(World Health OrganizationWHO)が定める制限値の約40倍を記録した。

 中国国務院が新たに発表した大気汚染対策は、地方自治体に大気の「質」について責任を負わせることや、主たる産業による汚染物質排出量を5年以内に30%削減することなどを定めている。ドイツ銀行(Deutsche Bank)は、「中国の汚染対策の一里塚」に値すると報告書で評価している。

 だがドイツ銀行は同じ報告書の中で、大気汚染対策は「中国の都市部の微小粒子状物質(PM2.5)の平均が30に低下するまでは、18年間続く恐れがある」とも警告している。PM2.5は、微小な粒子状物質で、スモッグや呼吸障害の原因になる。

■汚染対策の実施には「公衆の圧力」不可欠、専門家

 中国有数の環境団体、公衆環境研究センター(Institute of Public and Environmental AffairsIPE)の主任、馬軍(Ma Jun)氏は、新たな汚染対策が地方の指導者らに汚染削減への「新たなモチベーション」を与える可能性があるものの、「システム総体において、環境的な目標数値がどれほど重要視されるのかは分からない」と指摘する。

 一方で馬氏は、新たな対策では、発電所など大気汚染物質を大量に排出する施設に対し、環境関連情報の公開を義務づけていることを高く評価。「これが力学を変える。企業の情報公開に向けた大きな一歩になる」と述べた。

 その上で、馬氏は「対策は素晴らしいが、政府当局がこれを実行する動機に課題がある」と述べ、「公衆が圧力を掛ける必要がある。中国における公衆の力は大きく、中国での大気汚染対策をさらに推進させることができる」と語った。(c)AFP