【5月24日 AFP】ロシアが北極の氷上に設置した調査基地「ノースポール40(North Pole-40)」で、基地の下の氷盤が崩壊し始めたため、基地の調査員ら16人に緊急避難が命じられたことが、ロシア政府の23日の発表で分かった。

 ロシア天然資源環境省の声明によると、「氷の破壊により、同基地のさらなる活動と職員の命が危険にさらされている」という。同省のセルゲイ・ドンスコイ(Sergei Donskoi)大臣は、避難計画案の策定に3日間の期限を設定した。

 基地には現在、海洋学者、気象学者、技師、医師など16人が駐在している。同基地は、気象学的研究や環境汚染の監視に加え、多数の検査を実施している。

 同省は、この状況に対処しなければ、設備の損失につながるだけでなく、同基地が現在置かれているカナダの経済水域の近くの環境を汚染する恐れもあるとしている。

 同基地は砕氷船の助けを受け、ロシア北極圏にあるボリシェビキ島(Bolshevik Island)に移転する予定だ。

 ロシアのサンクトペテルブルク(Saint Petersburg)に本拠を置く北極南極研究所(Arctic and Antarctic Scientific Research Institute)の広報担当がAFPに語ったところでは、「氷盤は6つに砕けた」という。「隊員は無事だが、この状況で作業を続けるのは不可能だ。氷が崩壊する可能性があるので、(同基地を)避難させる決定が下された」

 同基地は22日早朝の時点で、北緯81度、西経135度の位置にあった。

 北極南極研究所で同基地を監督するウラジーミル・ソコロフ(Vladimir Sokolov)氏は、氷の崩壊は気候変動が原因だと話している。同氏は「これにより、北極での調査活動が著しく困難になってきている。氷はだんだんと薄くなっており、気象条件はますます難しくなってきている」とAFPに語った。

 同氏は、北極圏調査の継続の重要性を訴えている。「北極海は、南極圏と同様に、地球の“冷蔵庫”であり、気候に重大な影響を及ぼしている。この冷蔵庫に故障が生じ、われわれがそれに気付かないと、気象予測の誤りの原因となり、領土全体での意思決定の質に影響が及ぶ」

(c)AFP