【2月25日 AFP】霊長類の研究者で保護活動家のジェーン・グドール(Jane Goodall、78)博士は、ケニア・ナイロビ(Nairobi)の国立博物館で1月に行われた講演会に集まった人々にチンパンジー流のあいさつを交わした──講演会でグドール博士は、活動家へと転身した理由、これまでの活動、さらには環境と人間の関係性についての考察を交えて1時間にわたり語った。

 53年にわたりチンパンジーの研究を続けてきたグドール博士は、世界各国を精力的に訪問し、チンパンジーが直面している現状や、環境保護の必要性について、各国の人々や政治家らに示し続ける。

 過去25年は、1か所に3週間以上滞在したことがないと話す博士。現在の活動を開始した経緯について、1980年代に米国で開かれた会議に出席したことがきっかけだったと語る。この会議では、チンパンジーをめぐる倫理的な問題――医学研究での利用、生息地の破壊、わなを用いた個体の捕獲、そして野生動物の肉の取引き――が議題となったという。「科学者として会議に出席し、活動家になって会場を出た」と博士は当時を振り返る。

 活動家としてのキャリアをアフリカでスタートさせた博士は、「各地を旅する間に、チンパンジーやゴリラ、ボノボといった類人猿保護の必要性だけでなく、貧困をはじめ民族間の暴力など、この地域の人々が直面するさまざまな問題について学んだ」と話す。

 地域に横たわる問題の多くについて博士は、西洋人による植民地支配に始まり、そして現代では多国籍企業によって続けられている天然資源の搾取によってもたらされたものだと主張する。また地球人口の爆発的増加に伴う土地や食料、住宅需要の増加が、水不足と地球温暖化を誘発したとしている。

■「私たちは、子どもたちから、盗んで、盗んで、盗み続けている」

 チンパンジー研究の第一人者である博士の目には、人間と地球との関係は「どこかで間違ってしまった」ように見えているようだ。

「私たちは、子どもたちから、盗んで、盗んで、盗み続けている。恐ろしいことだ。『もうどうすることもできない』という人もいるが、それは本当だろうか?――絶対にそんなことはない」

 こうした考えを反映して、博士は「ルーツアンドシューツ(Roots and Shoots、根っこと新芽の意)」と名付けたプロジェクトを開始した。タンザニアから始まったこの活動は現在、132か国にまで広がり、世界各国で活動を推進している。主な目的は、若者たちに環境と動物相の重要性にもっと目を向けてもらうことだ。

「若者たちは、親や教師たちへの影響力を持っている。そして将来の親であり教師でもある。将来の事業経営者や政治家も今の若者たちが担うのです」

 最後に博士は、次のような言葉で講演会を締めくくった。

「私が研究を始めた当初、チンパンジーと人間のDNA構造の違いがわずか2%にも満たないことはもちろん、免疫系や血液系、脳の構造がどれほど類似しているか、また行動がどれだけ似通っているかなどについてはまだ解明されていなかった。チンパンジーには、利他的な行動を取る能力もある。チンパンジーと人間、その他の大型類人猿を区別する明確な線など存在しないのです」

(c)AFP/Aude Genet