【1月22日 AFP】海中に大量の石を溶かすことによって排出された炭素を吸収し、地球温暖化を止めることができるとの主張には多くの欠陥があるとする研究論文が、22日に学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ(Environmental Research Letters)」で発表された。

 地球温暖化の危機に対する手っ取り早い手段として現在注目を浴びている「ジオエンジニアリング」と呼ばれる手法については、今回の論文のほかにも多くの科学的評価がなされてきた。

 ドイツの研究チームは今回、「風化促進」と呼ばれる方法の実現性を調査した。この方法は、ケイ酸マグネシウムでできた「橄欖(かんらん)石」を粉々にしたものを海に大量に散布して海水をアルカリ化し、空気中にある人類由来の二酸化炭素(CO2)の吸収を促進するもの。

 海洋は巨大な炭素の「吸収源(シンク)」で、人類がこれまでに排出した化石燃料の排ガスの約半分を吸収してきたともされている。だがこのスポンジのような吸収能力も、徐々に低下していると考えられている。その結果、大気中の温室効果ガスの量が増えているほか、海洋そのものも酸性化が進み、多くの海洋生物の命を脅かしている。

 独ブレーマーハーフェン(Bremerhaven)にあるアルフレッド・ウェゲナー極域海洋研究所(Alfred Wegener Institute for Polar and Marine Research)の研究チームの計算によると、毎年30億トンの橄欖石を海に散布したとしても、現在世界で排出される炭素量の9%しか吸収されないという。さらに、吸収される炭素の3分の1近くが、石が海に溶けるように直径約1マイクロメートルまで粉砕するのにかかるエネルギーで、間接的に大気に戻るという。

 またこの手法により、1種の植物プランクトンが他の種を圧倒する勢いで繁殖するため、海洋生態系の根幹にも変化が生じるという。

 論文の主執筆者、ペーター・ケーラー(Peter Koehler)氏は「このジオエンジニアリング手法に必要な量の橄欖石を確保するためには、現在の石炭産業と同じ規模の産業が必要になる。また、必要とされる橄欖石を運ぶためには、専用の大型船舶100隻を用意しなければいけないだろう」と話している。

「全ての結論を合わせると、この手法は非効率的だと言える。地球温暖化に対するシンプルな解決法だとは決して言えない」(ケーラー氏)

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