【12月13日 AFP】地球上で最も大きな有機体である巨大樹木の消失率が、世界全体で危険なほど上昇しており、周囲に住む野生生物の生活を脅かしているとする研究論文が、7日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 研究を行ったオーストラリアと米国の共同チームは、このままでは世界各地の生態系から最大かつ最古の森が永遠に失われてしまうと警告している。

 研究を率いたオーストラリア国立大学(Australian National University)のデービッド・リンデンマイヤー(David Lindenmayer)氏によると、巨木の減少は「世界規模の問題で、大半の種類の森林で起きている。ゾウやトラ、クジラやイルカなどの大型動物が世界中でその数を減らしているのと同様に、高齢の巨大樹木も危険さらされていることを示す証拠が次々と報告されている」という。

 リンデンマイヤー氏は豪ジェームズクック大学(James Cook University)や米ワシントン(Washington)州にあるワシントン大学(University of Washington)の研究者らと共に、まずスウェーデンで1860年代にまでさかのぼる森林の記録を調べた。その後、欧州、北米、アフリカ、アジア、南米、ラテンアメリカ(中南米)、豪州に対象を広げ調査を行ったところ、標高の高低にかかわらず、樹齢100~300年の大型樹木の数が危険なレベルまで減少していることが確認された。減少が著しかった種は、豪州のマウンテンアッシュ、米大陸のマツやセコイア(アメリカスギ)、タンザニアのバオバブなどだという。

 論文によると、これら大型樹木は山火事による大量焼失に加え、山火事がない年でも通常の10倍ものスピードで減少を続けている。論文ではこの理由として、急激な気候変動による干ばつや気温上昇に、木材や農業用地の確保を目的とした森林伐採が重なっていることが考えられると説明している。

 大型樹木は生態系の中で非常に重要な役割を果たしている。地域によっては、これら大型樹木に巣を作ったり虚(うろ)の中に住む鳥や動物が全体の3割に上ることもあり、研究チームは大型樹木の消滅により、こういった動物たちも絶滅する恐れがあると危惧している。大型樹木はまた、膨大な量の炭素を貯蔵し、土壌の栄養分を循環させ、他の生物の生息に適した肥沃な土地を生み出すほか、地表の水の流れを調節する役割も果たしている。

 研究チームは、大型樹木の減少を防ぐためには、これらの樹木の育樹と保護に焦点を置いた政策や森林の管理が不可欠だと呼び掛けている。(c)AFP