【7月11日 RenewableEnergyWorld.com】英国人地質学者ライアン・ロー(Ryan Law)氏は5月に英国エクセター(Exeter)で女王に謁見(えっけん)した際、他の人はあまりしないことをした。ドリルビット(ドリルの先端に付ける刃の部分)を女王に見せたのだ。

 この工具はロンドン(London)に拠点を置く企業、ジオサーマル・エンジニアリング(Geothermal Engineering)の最高経営責任者を務めるロー氏が190度の高温の花こう岩を求めて地表から約3マイル(約4.8キロ)下まで掘り進むために使う装備の一部だ。

 同氏は英イングランド南西部コーンウォール(Cornwall)州レッドルース(Redruth)郊外で地熱発電所(設備容量1万キロワット)と熱供給施設の建設を計画している。「ただ説明するより、何か実物をお見せした方がいい」と話すロー氏は、同じスタンスでプロジェクトに取り組んでいる。

 世界が化石燃料からの脱却に動く中、このプロジェクトは再生可能エネルギーのあるコンセプトが太陽光や風力よりも大きな役割を果たす可能性があることを示すものになるとロー氏は信じている。英国内にさらに25か所の地熱発電所を建設するというロー氏の計画にも道を開くはずだ。

■特別な場所でなくても使える地熱

 このコンセプトはEGS(Engineered Geothermal Systems 人工地熱システム、あるいは Enhanced Geothermal Systems 強化地熱システム)と呼ばれている。「高温岩体(hot dry rock)発電」、「深部地熱(deep geothermal)発電」と言うこともある。

 従来型の地熱発電は火山や断層線、溶岩の噴出孔など、地表近くの地熱資源が多いアイスランドに見られるような激しい地理的条件を必要とするのに対し、EGSは地下深くにある岩の温度が発電に使うには十分に高いこと(一般的には120~200度)を利用する。

 EGSは地下の高温の岩石があるところにパイプで水を送って熱水にし、それをくみ上げて別のパイプと熱交換を行って蒸気を作り、発電用タービンを回したり公共の熱導管に熱を供給したりする仕組みだ。熱を失った水は再び地下に送られてこのサイクルを繰り返す。

 ロー氏のモデルでは約190度の花こう岩を利用するが、他の種類の岩も利用可能なのでほぼあらゆる場所で商用規模の地熱発電所や地熱利用施設を建設できる。このためEGSは「特別な場所でなくても使える地熱」だと言えるだろう。

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