【6月26日 AFP】インドネシア・スマトラ(Sumatra)島南端にあるウェイカンバス国立公園(Way Kambas National Park)のスマトラサイ保護区で23日、絶滅危惧種スマトラサイの雄の赤ちゃんが生まれた。飼育されているスマトラサイの出産はこの100年余りの間で4例目。

 遠隔カメラで出産の模様を見ていた保護活動家は、「皆が音も立てずに映像を見つめていた。だが赤ちゃんサイが見えると誰もが大声で叫んだ。サッカーの試合でゴールが決まったときよりも大きな声だった」と語った。

 インドネシアのズルキフリ・ハッサン(Zulkifli Hasan)林業相は25日、この赤ちゃんサイにアンダトゥ(Andatu)という名前を付けた。

■名前に「神からの贈り物」の意味を込める

 父親のアンダラス(Andalas)と母親のラトゥ(Ratu)のそれぞれの名前の一部を取ったものだが、インドネシア語の「Anugerah Dari Tuhan」(神からの贈り物)という意味も込めたという。

 ズルキフリ林業相は「アンダトゥは最も適切な名前だ。彼の誕生はスマトラサイ保護における画期的な出来事で、国民はわが国のサイ保護の取り組みに信頼を寄せるようになるだろう」と述べた。

 アンダラスは2007年に繁殖プログラムのため米オハイオ(Ohio)州のシンシナティ動物園(Cincinnati Zoo)からインドネシアに運ばれ、2009年にこの保護区でラトゥと引き合わされた。

 アンダラスは2001年9月に生まれた。英国のサイ情報サイト「Rhino Resource Center」によると飼育下でスマトラサイが生まれたのは1889年のカルカッタ動物園(Calcutta Zoo)以来112年ぶりだった。

 現在12歳のラトゥは野生のサイだったが、現在はこの保護区で暮らしている。1度目の妊娠は2か月、2度目は1か月未満で流産していた。今回は16か月の妊娠期間を経て出産した。

 東南アジアに分布するスマトラサイは、密漁や生息地の破壊によって生息数が過去20年で50%減少し、現在は200頭を下回ると考えられている。環境保護活動家らによると、インドネシアでは毎年200万ヘクタールの森林が失われている。(c)AFP