【6月25日 AFP】ニューヨーク(New York)やボストン(Boston)といった大都市が集中する米国の大西洋沿岸地域では、海面が世界平均の4倍もの速さで上昇しているとの報告が、24日の科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。

 海面の上昇により、世界有数の人口密集地域である米東海岸では洪水の頻度が増し、また湿地帯に住む動植物の生息環境が脅かされる恐れがある。

 全長1000キロにわたるこの地域では、1990年以降、毎年2~3.7ミリの海面上昇が観測されており、同時期の世界平均に比べてその上昇幅は顕著である。米地質調査所(US Geological Survey、USGS)が発表した今回の報告によれば、世界平均は毎年0.6~1ミリに留まっている。

 このまま地球の気温が上昇し続けた場合、同地域の海面上昇幅は2100年までに世界平均の1メートルを30センチ上回ることになるとUSGSは予測している。

 この局地的な海面上昇の加速については、大西洋を循環する海流が妨げられることが原因だと考えられている。

 USGSの海洋学者で報告書を共同執筆したカーラ・ドラン(Kara Doran)氏は、「グリーンランド氷床から溶け出した真水が大西洋に流れ込むことで、海流の循環が妨げられ減速する。(その結果、)メキシコ湾流(Gulf Stream)は弱まり、沿岸地域での海面が上昇する」と説明する。上昇幅はメキシコ湾流が海岸から遠洋へと向かうノースカロライナ(North Carolina)州ハタラス岬(Cape Hatteras)付近で最も大きいという。

 ドラン氏はAFPに対し、「現在、冬期や熱帯性高気圧の発生時に年に1、2回程みられる水面の極端な上昇や高波が、海面の急激な上昇により今後はさらに頻繁に発生する可能性がある」と述べた。これにより、海岸浸食や沿岸地域での洪水が増加すると科学者らは予測しているという。(c)AFP