【5月15日 RenewableEnergyWorld.com】米コロラド(Colorado)州ファウラー(Fowler、人口1087人)は、同州プエブロ(Pueblo)とカンザス(Kansas)州の州境をつなぐ150マイル(約240キロ)の回廊に位置する、およそ50万頭の畜牛を抱える町だ。

 数年前、米国の多くの地域は経済的苦境とエネルギー価格の高騰に見舞われた。ファウラーも例外ではなく、地元当局は地域の特徴を生かしたエネルギーで町の未来を救う方策の検討を始めた。ほどなくファウラーは地域内の発電量が消費電力以上となる「グリッド・ニュートラル」なグリーンタウンを目指す米国の町の旗手となった。

 ファウラーの執行部は当初、財政を救うため再生可能エネルギーに着目した。経済発展と環境面での恩恵は後からのボーナスだった。

 米防衛大手ノースロップ・グラマン・エアロスペース・システムズ(Northrop Grumman Aerospace Systems)の幹部を務めた後、当時ファウラー執行部の一員だったウェイン・スナイダー(Wayne Snider)氏は最近行われたインタビューで、「私が思うに、何事も最初の動機は金を節約することだ」と語った。「その後、そこに雇用創出の潜在力があることに気付く」

 ファウラーなど米国各地のいくつかの市町村は、電力コストの低減や州・連邦政府の補助金の獲得、あるいは「グリーンな地域」としてイメージを良くするために、エネルギーの自給を目指す先進的な事業に取り組んでいる。だが実現にあたって、これらの町は多くの課題に直面している。

■ファウラーの一大計画

 スナイダー氏率いるプロジェクトチームはあらゆる選択肢を検討した。風力発電の可能性を調べるため風速計を設置した他、住民に関心を持ってもらうために太陽光発電事業に着手し、総発電容量約600キロワットの太陽光パネルが水道施設や墓地など7か所の公有地に設置された。

 太陽光パネル関連の事業はコロラド州デンバー(Denver)の企業バイブラント・ソーラー(Vibrant Solar)が総工費120万ドル(約9600万円)で請け負い、既存の電力料金のおよそ半分の価格でファウラーに売電することになった。

 この取り組みは大きな反響を呼んだ。米コロラド州立大学(Colorado State University)、米国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy LaboratoryNREL)などが支援を申し出た。太陽光パネルの稼動開始を祝う式典には当時のビル・リッター(Bill Ritter)州知事も出席した。

「私たちは(太陽光発電で)どれだけの金が節約できるかを社会に示そうと試み、実際に町は金を節約できた。初年度でおよそ2万ドル(約160万円)の節約になったはずだ」とスナイダー氏は振り返る。

 さらに町の南に2000キロワットの太陽光パネルを設置する計画が続く予定だった。また、牛ふんを嫌気性細菌で処理してメタンガスを発生させる施設ができれば、グリッド・ニュートラルの実現に近づき、45人の雇用も創出されるはずだった。(c)RenewableEnergyWorld.com/Dave Levitan/AFPBB News

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執筆者のデーブ・レビタン(Dave Levitan)氏は主にエネルギーと環境問題を扱うジャーナリスト。「Yale e360」「OnEarth」「IEEE Spectrum」などに寄稿している。再生エネルギー専門サイトRenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。