【5月14日 RenewableEnergyWorld.com】約1年前には自然災害が日本を再生エネルギー市場として再浮上させた。そして今度は約1万キロ離れたフランスで、政権交代が同じ効果をもたらそうとしている。

 仏大統領選の結果、保守派・国民運動連合(UMP)のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が、社会党のフランソワ・オランド(Francois Hollande)前第1書記に政権の座から追われることになった。フランス政治の方向性が大きく変わろうとする中、その影響を探る世界の前に示された最初の兆しが再生エネルギー政策の転換だ。

 サルコジ氏はフランスの電力需要の75%以上を賄う原子力発電の強力な支持者だった。そしてグリーンエコノミー(環境に優しい経済)を育む政策の拡大にはおおむね反対してきた。他方、オランド氏は再生可能エネルギーの熱心な支持者で、2025年までにフランスの原発依存度を50%に減らしたいと公言している。

 フランスのエネルギー戦略が変わろうとする今、周辺国は大幅な歳出削減策の一環として再生エネルギーに関する取り組みを縮小している。ドイツ、イタリア、英国では最近、再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度(Feed-In-TariffFIT)が縮小され、それらの国の太陽電池産業はいまだその影響を評価しきれていない。

■高まる「脱原発」の声、原発の穴をどう埋める?

 フランスが再生可能エネルギーの将来を見直す背景には、このところの日本の苦闘が大きく関係している。2011年3月に起きた東日本大震災の大地震と巨大津波、そして原発危機は、日本の将来のエネルギー政策を太陽、風力、バイオマス、地熱といった方向に動かした。東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故後、フランスや日本と同様に原発に大きく依存していたドイツも同じ転換を余儀なくされ、原発再開を考えていたイタリアはその扉を素早く閉ざした。

 今や先進国の中で、原発から電力の大部分を得ている国はフランスだけとなった。しかし、フランスに住む人々の間でエネルギー政策の転換を求める声は日増しに高まっている。

 純粋に経済の観点から考えると、フランスはその経済のかなりの部分を、原発を基礎とした上に築いてきた。国内にある原子炉は58基、原発の総発電容量は6300万キロワット。世界最大の電力輸出国でもあり、特に隣国スイスとイタリアへの輸出が多い。また原子炉の設計から最近増えている核燃料の再処理に至るまで、原子力技術を牽引するリーダーでもある。

 つまりフランスの原子力産業を守ることには大きな経済的利益があり、そのことが再生可能エネルギーへの転換を長い、直線的には進めないプロセスにしている。しかし、サルコジ大統領が約束したように老朽化した原発を廃止する方向にフランスが動くとすれば、次は、原発の穴を埋めるにはどの再生可能エネルギーが最も適しているかという問いにぶつかるだろう。

■太陽光発電:新規導入を年50万キロワットに制限

 2011年に発電容量150万キロワットの設備を導入し、太陽光発電の総発電容量が250万キロワットに達したフランスは、表面的には世界第5位の太陽光発電のエリート国になった。しかし、欧州太陽光発電産業協会(European Photovoltaic Industry AssociationEPIA)は、この数字は誤解を招く恐れがあると指摘する。

 同協会によれば、150万キロワットというのは2011年に送電網に接続された値であり、大半の設備は2010年に設置されたもので、2011年に設置されたものは全体の10%に満たなかったという。

 新たな法的枠組みがFITの対象にしているのは100キロワットまでの設備に限られており、それよりも規模の大きなプロジェクトは同年夏以降に行われた数種類の入札に参加しなければならなかった。新たな導入支援の枠組みは、1年間に新規導入される太陽光発電の設備容量を50万キロワットに制限することを目指すものだ。

 フランスでは送電網への接続作業は最大1年半と極端に長い時間がかかる。2011年は新規設置が少なかったにもかかわらず送電網に接続された太陽光発電の設備容量が過去最高の150万キロワットを記録したのは、太陽光発電推進の鍵だったFITの縮小と接続作業にかかる時間の長さから説明できると同協会は指摘している。

■風力発電:現状は少ないが成長の可能性も

 一方、欧州風力エネルギー協会(European Wind Energy AssociationEWEA)によればフランスの風力発電への投資金額は縮小している。フランスで2010年に新規に設置された風力発電容量は139万6000キロワットだったが、2011年は83万キロワットに減少した。

 フランスの風力発電は近年、相当量の設備を導入し総発電容量は680万キロワットに上っているが、国内で消費される電力に占める割合は2.8%しかない。沖合風力発電は現在建設中の発電所が1か所、候補地が数か所ある。フランス風力発電の成長の可能性はここにあるだろう。

 フランス政界の先行きは不透明だが、太陽光発電と風力発電業界は政権交代の恩恵を受けられそうだ。問題は、欧州連合(EU)加盟国の間で小さな政府を指向する動きがある中、どのように再生可能エネルギーへの投資を成し遂げるか、という点だ。(c)RenewableEnergyWorld.com/Steve Leone/AFPBB News

執筆者のスティーブ・レオン(Steve Leone)氏はRenewableEnergyWorld.comのアソシエート・エディター。再生エネルギー専門サイトRenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。