【12月8日 AFP】粉雪のように柔らかな砂浜に目近く迫る緑の丘、絶え間なく打ち寄せるインド洋の大波――。息をのむような美しい景色が広がるここ、南アフリカ・東ケープ(Eastern Cape)州のセカンドビーチ(Second Beach)は、しかし、サメの襲撃による死者数が世界最多の場所だ。過去5年に5人が亡くなり、中でも2009年は3人が死亡した。

「ここは今、世界で最も危険なビーチかもしれないね」。経営するゲストハウスのベランダから今年1月、10代のサーファーがサメにかみ殺される瞬間を目撃したマイケルさんは、そう話す。セカンドビーチでサメの襲撃が急増している原因については、「あれこれ推測するのは簡単だが、原因をぴたりと言い当てるのは難しいな」と考え込んだ。

■ずっと平穏だったビーチ、襲撃多発の謎

 サメがこの海岸にやってくる原因としては、さまざまな説が唱えられている。呪術師が海辺で行う儀式でいけにえとして捧げる動物の血に誘われているのだとか、ビーチで大音量で流される音楽に興味を示すからだとか、犠牲者がサーファーとライフセーバーに限られていることから彼らに呪いがかけられたためだというものまで。

 専門家によると、セカンドビーチで人を襲うサメの大半が、極めて獰猛なオオメジロザメ(別名ザンベジ・シャーク)だ。体長が2メートル以上にもなるこのサメは、浅海で海水浴客などを襲撃することで悪名高い。

 現在、ダーバン(Durban)にあるサメ被害対策の専門機関「クワズル・ナタール・シャークス・ボード(Kwazulu-Natal Sharks Board)」がセカンドビーチの被害事例を調査しており、サメを捕獲して発信機を装着する計画も練っている。ジェレミー・クリフ(Geremy Cliff)研究主任はAFPの取材に、「尋常ではない。襲撃件数の多さではなく、襲ってきたサメが全て非常に獰猛で、全ケースで死者が出ている点がだ」と話した。

 オオメジロザメは淡水域にも生息し、セカンドビーチ東側のファーストビーチ(First Beach)に流れ込むウムジンブブ川(Umzimvubu River)の河口で繁殖しているとみられている。

 だが、地元民と専門家を最も困惑させているのは、セカンドビーチが長年、サメの襲撃と無縁の安全な遊泳スポットだったという事実だ。「ビーチは何十年も平穏だった。なぜ突然、サメ襲撃事件が多発するようになったのか分からない。手掛かりさえもつかめない」と、セーシェル諸島で発生した2件のサメ襲撃事件を調査してきたばかりだというクリフ氏は話した。

 なお、2010年に死者が出たサメ襲撃事件は世界で6件あったが、うち2件は南アフリカで発生している。ダーバンの海岸にはサメ除けのネットが張られており、ケープタウン(Cape Town)のビーチにはサメ監視人が配備されている。(c)AFP/Justine Gerardy