【6月22日 AFP】中国の三峡ダム(Three Gorges Dam)周辺の環境汚染が広がっている問題で、ダム事業者は19日、同ダムには治水やクリーンエネルギーの生産、水の供給という「歴史的使命」があると反論した。

 長江(揚子江、Yangtze)にある世界最大級の三峡ダムについては中国政府が5月、ダムによる環境的、社会的、地質的な問題があることを認め、「ただちに解決されなければならない問題がある」と異例の発表をしたばかりだった。

 ダム事業者の中国長江三峡集団(China Three Gorges Corporation)は、前週末に公表した社会的責任報告書の中で、「これまでずっと、社会の利益を優先してきた」と述べ、「治水や発電、水運、下流への水供給、エコロジーなどのために能力を存分に発揮してきた」と主張した。

 報告書は、三峡ダムが2009年末までに3684億キロワット時の発電をしたとの実績を挙げ、また近年で最悪の洪水が発生した2010年には76億立方メートルの水を食い止めたと指摘。事業者も貧困対策や災害救援に約2億5000万ドル(約200億円)相当を提供したと強調した。

 一方、ダムの環境コストや社会コストに警告を発する声はこれまでもあった。環境汚染の懸念される中国で、ダムにごみや汚染物質が蓄積し、水質も悪化してしまうと環境活動家らは警告してきた。政府も前年8月、長江流域の環境被害の対策には、汚水処理を含め数十億ドルが必要だとの見解を示している。また、ダム建設のため、住民約140万人が移住し、いくつかの文化遺産が水没した。

 だが、中国長江三峡集団は、長江上流域に4つの「大規模水力発電所」を建設する計画を新たに発表。三峡ダム2つ分に相当する43ギガワットの発電が可能になると述べた。電力需要が急増する中国は、エネルギーミックス戦略の中で、水力発電に大きく依存している。国営メディアによれば、多くのダムが建設中か計画段階にあるという。(c)AFP/Allison Jackson

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