【6月3日 AFP】東京大学発のベンチャー企業「スマートソーラーインターナショナル(Smart Solar International)」がこのほど、太陽の方角に合わせて向きを変える反射鏡で集光効率を従来型の2倍に高めた新型の太陽光発電システムを開発した。東日本大震災の被災地への出荷を目指し、8月から生産を開始するという。

 同社は米カリフォルニア(California)にもオフィスを持ち、太陽光発電システムの開発・販売を手がける。今回開発したシステムの特徴は、太陽の動きを追って棒状のアルミ製反射鏡がゆっくりと回転し、常に多くの太陽光を集めることができる「追尾集光型太陽光発電システム」だ。集めたエネルギーは、チューブ状容器の中に入った高性能の多層太陽電池モジュールに蓄積される。チューブは過熱を防ぐ構造になっており、エネルギー変換効率の低下を抑えるほか、余った熱は温水器に利用できるという。

 既存のシリコン太陽光発電は高価かつ中国からの輸入への依存度も高いシリコンを大量に使用するが、「追尾集光型太陽光発電システム」はより小型でシリコン使用量も少ないため、製造コストが低く抑えられるという。

 同社社長を務める東大先端科学技術研究センター(University of Tokyo's Research Center for Advanced Science and Technology)の富田孝司(Takashi Tomita)特任教授は、「1つの装置で発電を発熱の2つの効果が得られる」と同システムの利点を強調した。富田氏は元シャープ(Sharp)常務で、ソーラーシステム事業本部長を務めた太陽光発電システム分野の第一人者だ。

 日本では、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故により、再生可能エネルギー需要が一層高まっている。富田氏も、新型太陽光発電システムを「まず、早急に被災地へ届けたい」と話す。コンビニや公共施設など人が多く集まる場所への出荷を考えているという。

 将来的には、2014年までにアジアや中東など海外展開を目指す計画で、10月から試作品販売を開始するという。(c)AFP