【4月20日 AFP】太平洋に生息する鳥の羽に含まれるメチル水銀の量が、この120年間で増加しており、人間による汚染の結果を示している可能性が高いとの論文が、18日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 研究を発表したのは米ハーバード大学(Harvard University)の研究チーム。米国にある2つの博物館から、1880~2002年のクロアシアホウドリの羽を収集して分析した。「昔の鳥の羽から、いわば、海洋の記憶が呼び覚まされるのだ」と、論文の共同執筆者、マイケル・バンク(Michael Bank)氏は述べた。

 化石燃料を燃やすことで排出されるメチル水銀は、毒性があり、神経系に損傷をもたらす危険性がある。また、魚介類の水銀含有量が増えれば人間の健康に危険性を及ぼすとされており、特に子どもや妊娠中の女性は、特定の魚の摂取量を制限するよう呼びかけられている。

■水銀排出の推移と一致

 論文は、「メチル水銀の含有量増加はおおむね、歴史的かつ世界規模での、また近年の地域規模での人為的な水銀排出と一致する結果となった」とまとめている。

 羽への水銀の濃縮が最も高かったのは1990年以降で、これはアジアからの二酸化炭素排出量が急増した時期と一致する。

 アジアからの水銀排出量は1990年には年700トンだったが、2005年には1290トンに増えている。2005年で最大の排出国は中国で、635トンを排出していた。

 一方、最も水銀量が最も少なかったのは1940年以前だった。

■水銀摂取量や個体数減少とも関連か

 クロアシアホウドリは国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)の絶滅危ぐ種に指定されており、ハワイ(Hawaii)島や日本の近海を中心に、北太平洋に12万9000羽が生息。魚や魚の卵、イカ、甲殻類などを餌としている。

 論文は、羽に含まれた高濃度の水銀は、鳥の高い水銀摂取量や個体数の減少と関連があるかもしれないと、指摘している。(c)AFP