【5月12日 AFP】太平洋以外で確認されたことは過去数百年間ないとされるコククジラが、イスラエル沖に1頭単独で出現し、科学者たちを驚かせている。

 このコククジラは今月8日、イスラエル中部ヘルツェリア(Herzliya)沖で初めて目撃された。北太平洋で餌を探しているうちに迷い、数千キロを旅してきたものと思われる。

「信じられない出来事だ。過去最も重要なクジラの目撃例だといえる」とクジラの種類を判別したイスラエル海洋ほ乳類調査保護センター(Israel Marine Mammal Research & Assistance Center)所長のアビアド・シェイニン(Aviad Scheinin)博士は驚きを隠さない。

 コククジラはかつて北大西洋にも生息したが17~18世紀を最後に北大西洋では確認されていない。現在残るコロニー(群れ)は北太平洋の西部と東部に生息している。

 太平洋北東部に今も生息するコククジラは通常、10月ごろになると、水温の高いメキシコ沖のカリフォルニア湾(Gulf of California)付近へ向かって南下する。その回遊距離は8000キロを超える。

 しかし、シェイニン博士はAFPの取材に対し「現れたコククジラは太平洋に住んでいたものが、北極圏の氷が溶けたことでできたベーリング海峡(Bering Strait)付近の回廊を通ってきてしまったのではないか」と答えた。

 このコククジラは秋に南下し始め、米大陸を左手に泳ぎ「左折して」カリフォルニア湾に入ろうとしたに違いない。しかし北極海の北西航路(Northwest Passage)から大西洋に出てジブラルタル(Gibraltar)海峡まで行き着いてしまい、そこで左折した結果イスラエル沖にたどり着いたと博士は推測している。(c)AFP/Hazel Ward