【4月29日 AFP】北極域の気温がここ数十年間で急激に上昇した原因は海氷の減少だとする論文が28日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 論文を発表したのは、メルボルン大学(University of Melbourne)の研究者、ジェームズ・スクリーン(James Screen)氏とイアン・シモンズ(Ian Simmonds)氏。ヨーロッパ中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather ForecastingECMWF)の最新の再解析データを使って、過去20年間にわたって季節ごとに気温上昇傾向と海氷の減少に相関関係があることを発見した。

 1989年から2008年の間に地球の平均温度は0.5℃上昇したが、北極域での上昇幅は2.1℃と地球上で最も急激だった。この原因について、科学者の間で意見が鋭く対立していた。

 スクリーン氏らは、極地で地球平均を超えて温暖化が進む「極地増幅(polar amplification)」という現象の主な原因は、曇天の増加や海洋・大気の循環の変化ではなく、氷で覆われた面積の減少だということが明らかになったとしている。また、気候変動の影響で北極の氷冠が減少し、それがさらに温暖化を促進するという「正のフィードバック」が地域的な規模ですでに発生していると主張した。

 スクリーン氏はAFPへの電子メールで、海氷は海に浮かぶ日傘のようなもので、太陽の光を宇宙に反射しており、氷が解けると海が太陽からの熱を吸収して海上の大気の気温が上がると説明した。また、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)が使用したモデルは最近の北極海の海氷の減少の影響を過小評価しており、将来の海氷の減少とそれによる温暖化も過小評価しているおそれがあると指摘した。(c)AFP/Marlowe Hood