【3月22日 AFP】ナノテクノロジーを応用して海水から塩分を取り除く小型脱塩装置を米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の研究チームが開発し、国連(UN)が定めた「世界水の日(World Water Day)」の前日にあたる21日、科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)」で発表した。

 MIT電気工学・コンピューターサイエンス学部のハン・ジョンユン(Jongyoon Han)准教授らが開発した脱塩装置はまだ試作品の段階だが、清潔な水資源へのアクセスが限られている発展途上国などでの利用が期待されている。

 従来の脱塩処理は、含塩水をろ過して塩の分子を取り除く仕組みだが、大量のエネルギーを必要とするうえ、ろ過膜が詰まりやすいという欠点がある。このため、脱塩工場の大型化やコスト高、装置の固定化は避けられない。

 一方、原理証明試験段階にあるMITの脱塩装置は、荷電イオン電流がイオン選択膜を通過する際に起きるイオン濃度分極を利用して、含塩水内の荷電イオンと分子をろ過膜から遠ざける力を発生させるという仕組みだ。

 この装置では、含塩水から細胞やウイルス、微生物などとともに塩イオンが取り除かれ、脱塩した水のみが微小のマイクロチャネルを通過していくのだという。

 この小型装置による回収率は50%、つまり投入した含塩水の半分が脱塩される。また、脱塩時には99%の塩分を取り除くことができるという。さらに、エネルギー効率は、既存の最先端大型脱塩プラントと同等以上。

 ハン准教授らは現在、装置の特許を申請しているが、商業利用向けに同装置の大量生産が可能となるのは数年後となる見通しだ。

 3月22日の「世界水の日」は「清潔な水で世界を健康に」がテーマで、水ストレスや人口の急増などで水質汚染が進む国々に警鐘を鳴らす目的で、国連が制定した。(c)AFP/Richard Ingham