【1月7日 AFP】南極海で、日本の調査捕鯨船と米環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation SocietySS)」の超高速抗議船「アディ・ギル(Ady Gil)」号が衝突した問題で、ニュージーランドとオーストラリアは7日、それぞれ調査を開始すると発表した。

 ニュージーランドのマレー・マカリー(Murray McCully)外相は、アディ・ギル号はニュージーランド船籍で、同国の海洋当局の管轄下にあるとして、調査を行う意向を示した。また、シー・シェパード側と日本側双方に、人命を危険にさらす行為を止めるよう求めた。

 一方、オーストラリアのジュリア・ギラード(Julia Gillard)副首相も同日、同国の海事安全局(Maritime Safety Authority)に調査を命じたことを明らかにした。現場海域は同国の経済水域ではないものの、同国が捜索・救助に責任を持つ範囲内だったとしている。

 衝突の映像を見たギラード副首相は、死者が出なかったのは「奇跡的だ」と語った。

■日本政府はニュージーランドに抗議

 これに対し、平野博文(Hirofumi Hirano)官房長官は7日の定例記者会見で、アディ・ギル号の船籍のあるニュージーランド政府に厳重抗議したことを明らかにし、「今後、こういうことのないように、強く要請をしている」と述べた。

■主張に食い違い

 アディ・ギル号のピート・ベシューン(Pete Bethune)船長はラジオ・ニュージーランド(Radio New Zealand)に対し、衝突の責任は完全に日本船にあると非難するとともに、死者が出なかったのは運がよかっただけだと語った。

 ベシューン船長は、「(日本船は)左舷側にいて、通航権はなかったし、われわれは停止していた」「彼らは故意にわれわれに向かって進み、押しつぶそうとした」と主張した。

 一方、調査捕鯨を行う日本鯨類研究所(Institute of Cetacean ResearchICR)のニュージーランド地区の広報担当者、グレン・インウッド(Glenn Inwood)氏はAFPの取材に、責任はシー・シェパード側にあると反論した。

 インウッド氏は、捕鯨船から撮影した映像ではアディ・ギル号は停止しているが、その後、エンジンを全開にして近づいてきたと指摘。「船長は(第2)昭南丸の進路を妨害しようとしたか、正面に回り込もうとして目測を誤ったのだろう」と語った。(c)AFP

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