【12月9日 AFP】英国の地球温暖化の研究者が書いた数千通の電子メールが流出し、温暖化の脅威が誇張されていた疑惑が浮上したいわゆる「クライメートゲート(Climategate)」問題で、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)のラジェンドラ・パチャウリ(Rajendra Pachauri)議長は8日、研究者らを擁護する発言をした。

 パチャウリ議長は、今回の電子メール流出は、IPCCの大きな成果である第4次報告書(Fourth Assessment Report)の信頼性を落とすため、この報告書の執筆に関与した「過去20~21年間にIPCCに多大な貢献があった卓越した科学者たち」を標的にしたハッキングによるものだと語った。また第4次報告書を見直すべきとの意見があることについては、その必要はないとの立場を示した。

■対立する主張、独立した調査を求める声も

 世界有数の温暖化の研究機関、英イースト・アングリア大学(East Anglia University)の気候研究ユニット(Climatic Research UnitCRU)のフィル・ジョーンズ(Phil Jones)所長らが書いた電子メールの中には、一時的に温暖化のペースが遅くなったことを科学者が上手く説明できないことに対するいらだちが表現されている。また、懐疑派の活動への対処法も議論している。

 地球温暖化に懐疑的な人々は、流出した電子メールは地球温暖化を劇的にみせるために科学者がデータを改ざんした証拠だと主張している。一方、電子メールを書いた研究者らは、メールではふざけたり反語的な言葉遣いをしたりする場合もある上、懐疑派が自分たちの主張に合うよう電子メールの内容をゆがめて利用していると反論している。

 2007年に発表された第4次報告書は、温暖化の証拠は「絶対的」で、氷河や降雪への影響や季節の変化は気候変動がすでに進行していることを示すサインだと指摘している。

 国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate ChangeUNFCCC)のイボ・デ・ボーア(Yvo de Boer)事務局長は、今回の事件がコペンハーゲンで開催中の第15回締約国会議(COP15)に与える影響はほとんどないと述べた。

 一方、サウジアラビアは7日、COP15の開幕式で、気候科学に対する人びとの信頼が揺らいでおり、独立した調査が必要だと主張した。(c)AFP/Marlowe Hood


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