【6月9日 AFP】環境意識の高い人なら、危険な気候変動をもたらす温室化効果ガスを削減するためあらゆる努力をするだろう。こうした人びとは、移動には飛行機よりも列車やバスを使い、可能な限り車の利用は控える――こうした努力が地球を救うと信じているに違いない。

 しかし 米カリフォルニア大学デービス校(University of California at Davis)の環境工学研究者、ミハイル・チェスター(Mikhail Chester)氏とアーパッド・ホーバス(Arpad Horvath)氏は、公共交通機関はそれほど環境に優しくないという論文を英国物理学会(Britain's Institute of Physics)の研究誌「Environmental Research Letters」に発表した。

 論文は環境に影響を与える要因には、交通機関が走行時に排出するガス以外にもさまざまなものがあり、その全てがよく知られているわけではないとしている。電車を利用するよりも自動車で移動するほうが環境への影響が小さい場合もあるとう。

■効率だけでなくエネルギー源も重要

 両氏は、公共交通機関が必要とする電力の供給源として原油、ガス、石炭、それぞれを使用した場合のエネルギー効率を算出した。

 その結果、エネルギー効率が高いとされるボストン(Boston)の地下鉄は電力の82%を化石燃料に頼っていることが分かった。一方、サンフランシスコ(San Francisco)の鉄道は、エネルギー効率ではボストンに劣ったが、化石燃料への依存度は49%で、ボストン地下鉄よりも環境への負荷は少ないことが明らかになった。

■建設・維持による負荷、乗車率も検討を

 また走行地の排出ガスだけでなく、交通機関の建設やメンテナンスで発生する環境負荷も考慮しなければならない。走行時の排ガスに比べ目立たないが、これらの要因を考慮すると各交通機関が環境に与える影響は自動車で63%、航空機で31%、鉄道で55%も増えることになるという。

 乗車率も重要だ。チェスター氏らが米国の生活様式や技術を前提に推定したところ、定員一杯を乗せて走る自動車は、それが4輪駆動車であっても、1人を1キロメートル運ぶ際に排出する排ガスは定員の25%しか乗っていない電車よりも低いと推計された。

 論文は、交通機関の種類や耐用年数まで考慮して環境負荷コストをより広く把握することで、政策決定者はより賢明なインフラ投資の判断ができるとしている。(c)AFP