【4月29日 AFP】欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)は28日、南極半島(Antarctic Peninsula)から分離したウィルキンス棚氷(Wilkins Ice Shelf)が氷山として分解しつつあると発表した。

 ESAによると、ESAの環境監視衛星「エンビサット(ENVISAT)」とドイツ航空宇宙センター(German Aerospace Centre)の地球観測衛星「TerraSAR-X」が撮影した写真には、ウィルキンス棚氷の北端が分解して複数の氷山が発生している様子がとらえられているという。

 こうした現象は24日に始まり、今後さらに数週間続くと見られている。これはウィルキンス棚氷が不安定になってきていることを示しており、北端では少なくとも15年前から脆弱(ぜいじゃく)化が進んでいるという。

 ウィルキンス棚氷はかつては面積が約1万6000平方キロに及んでいたが、1990年代に入って後退を始め、前年5月までには、南極半島のシャルコー島(Charcot Island)およびラタディー島(Latady Island)とは細い氷橋でかろうじてつながっている状態にまでなった。

 しかしこの氷橋も、今月5日には途切れていることが確認された。ウィルキンス棚氷の南極半島からの分離は、この20年間にわたって続いてきた南極大陸の棚氷の溶解や後退のなかでも最大の事件と位置づけられる。

 英南極調査所(British Antarctic SurveyBAS)のデービッド・ボーガン(David Vaughan)氏は、「南極半島の温暖化の結果であることは疑いの余地がない。この地域の温暖化は、南半球のなかでも最も急速に進んでいる」と指摘した。 
 
 南極半島の気温は、過去50年で地球平均を約6倍も上回る2.5度も上昇したとの統計もある。(c)AFP 

  
環境監視衛星「エンビサット」が撮影するウィルキンス棚氷の写真を公開しているサイト(英語)