【9月4日 AFP】北極圏にあるロフォーテン諸島(Lofoten Islands)は、ノルウェー有数の捕鯨基地だ。この国でも捕鯨への国際的な風当たりは強く、鯨肉の消費量は落ち込んでいるとの指摘もあるが、漁船員らは捕鯨のともしびを絶やすまいと奮闘している。

 ノルウェーは、国際捕鯨委員会(IWC)が1986年に商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を採択してから7年後に商業捕鯨を再開したが、割当量に達したシーズンは1回のみだ。今シーズンの捕獲数は1052頭の割当量の半分にしか到達していない。

 漁船員らは、捕獲数が少ない原因を燃料費高騰や悪天候などのためとしているが、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)の見方は違う。「鯨肉の市場はないに等しいからだ」と、同団体ノルウェー支部のTruls Gulowsen氏は言う。同団体は、しばらく前から、捕鯨船につきまとうという戦略をやめている。「放っておいても、市場原理が働いて、捕鯨産業は成り立たなくなるだろう」とGulowsen氏。

 このところ、国内の食料品店で鯨肉を見つけることは難しくなっているが、同諸島の小さな村スボルベル(Svolvaer)のレストランにはクジラのフライやカルパッチョといったメニューが並ぶ。

 12年前に機械工をやめて漁船員になったという男性は、「問題は、捕鯨に抗議する人の多くが、何に対して抗議しているのかを理解していないことだ。クジラには実に多くの種類があることさえ知らない」と話す。

 ノルウェーとアイスランドは、商業捕鯨の割当量を捕獲しても充分なだけの個体数が存在するとして、モラトリアムを無視して商業捕鯨を実施している。

 その一方で、北大西洋に10万頭以上いるとされるミンククジラは、依然としてワシントン条約(CITES)の絶滅危惧種に指定されている。「(環境保護団体による)ロビー活動のたまものですよ」と、ノルウェー捕鯨者協会のBjoern Hugo Bendiksen会長はため息をつく。

■捕鯨は補助的な収入源に

 ミンククジラ1頭で鯨肉1トン以上がとれるが、加工工場の買い取り価格は、1キロあたり30クローネ(約590円)にしかならない。1シーズンの収入の半分は燃料代に消え、残りが乗組員4、5人の間で分配される。

 かつては主な収入源だった捕鯨も、今やタラやニシン漁の収入を補う程度という。ノルウェーの捕鯨船30隻余りの大半で、捕鯨収入が全収入に占める割合は20~25%という状況だ。

 それに引き換え、ホエール・サファリは近年もうかる商売となっている。コストがかからず、抗議を受けることもほとんどない。ホエール・サファリ会社「Ocean Sounds」の社長は、「いちど、ドイツ人観光客らの目の前で、クジラに銛が打ち込まれたことがあります。彼らは恐怖で凍り付きました。わたしも、心臓発作を起こすところでしたよ」と語った。(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes