【9月2日 AFP】グリーンランドの氷床が急激にとける可能性をもはや否定することはできない――。米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)の研究者らは、31日の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」(電子版)にこのような論文を掲載した。

 研究チームは、2万年前の氷河期に北米のほぼ全域を覆っていたローレンタイド(Laurentide)氷床が、予想をはるかに超えるスピードでとけ、数十億トンの水を放出していたことを突き止めた。この溶解が「地軸のブレ」という自然要因による温暖化によって引き起こされたことから、人為的な温室効果ガスによる昨今の温暖化が、グリーンランドの氷床にどのような影響を及ぼすかに関心が集まっている。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は前年、今世紀末までの海面上昇幅を当初18-59センチと見積もったが、南極とグリーンランドの溶解の影響が不透明だとして、最終的には上限の設定を控えた。

■氷床の溶解で、海面が最高7メートル上昇

 ウィスコンシン大の地質学者、アンダース・カールソン(Anders Carlson)氏率いるチームは、ローレンタイド氷床の堆積物の放射能測定によって後退の時期を特定。これを、サンゴの分析による海面の推移と比較した。

 その結果、氷床は、約6500年前に完全に消滅するまでの間に、急速な溶解を2回ほど経験していたことが分かった。1回目は約9000年前で、海面は年に1.3センチずつ、約7メートル上昇した。2回目は約7500年前で、海面は年に1センチずつ、5メートル上昇した。ちなみに、現在の海面上昇幅は年に約3.3ミリメートルだ。

 チームは、グリーンランドは極寒地域にあって北米の地質とは若干異なるため、ローレンタイドに関する計算式は厳格にはグリーンランドには当てはまらないと示唆する。その上で、ローレンタイド氷床の溶解をもたらした自然要因による温暖化は、IPCCが予想した今世紀末までの海面上昇幅18-59センチの上限に相当すると指摘する。

 グリーンランドの氷床は、ローレンタイド氷床よりもはるかに小さいため、地球の冷却装置とはならない。

 カールソン氏は、「われわれは、いまだかつて氷床が急激に解けたり完全に消滅するさまを目撃したことはないが、グリーンランドは数世紀以内に消滅してしまうかもしれない」と語っている。(c)AFP