【8月29日 AFP】イタリアの海洋科学者チームは、27日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に、深海のウイルスが海の炭素循環を活性化している可能性を指摘した。炭素循環は海洋生物の維持に不可欠なだけではなく、地球温暖化を抑制する作用があるとされている。

 炭素循環では、海面にただよう微少な藻などの原核生物は大気中から二酸化炭素を吸収する。この生物の多くは海のウイルスに感染して死に、炭素を多く含んだその体はゆっくりと海底に沈むが、食物連鎖により捕食動物の体内へと再び吸収されていく。海面のウイルスは、このように、バイオマス(生物資源)を破壊すると同時に保持するといった、ジキルとハイド的な役割をすることは昔から知られていた。 

 イタリア・アンコナ(Ancona)にあるマルケ州立ポリテクニック大学(Polytechnic University of Marche)の海洋科学者チームは、深海のウイルスも生態系の維持に貢献している事実を突き止めた。

 チームは、世界各地で183-4603メートルの海底から堆積物を採取し分析した。すると、深海にはウイルスが非常に多く存在し、原核生物と激しく作用し合って、栄養分の乏しい深海の生態系を維持していることがわかった。

 海は毎年数十億トンのCO2を吸収し、人為的な温室効果ガスのクッションの役割を果たすことから、こうしたウイルスが地球温暖化においてどのような役割を果たすかも注目されている。(c)AFP