【7月22日 AFP】アマゾン川(Amazon River)が運搬する養分が、大西洋の海底で炭素吸収源の生成を活性化する役割を果たしている。南カリフォルニア大学(University of Southern California)の研究者らによる論文が、21日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 養分の中で鍵となる成分は、鉄分とリンだ。これらは、ジアゾ栄養生物という有機体で、大気中の窒素と炭素を取り込み、それらを有機固形物に変換して海底に沈める働きをしている。

 今回のチームに加わった米国、ギリシャ、英国の研究者らは、アマゾン川がこうした有機体を数百キロを経て大西洋まで運搬し、炭素窒素サイクルに予想をはるかに超える影響を及ぼしていることを発見した。

 論文の第一著者である南カリフォルニア大のDoug Capone氏は、世界のほかの川も、炭素を海底に沈殿させる同様の炭素隔離を促進しているのではないかと予測する。

 今回の研究結果は、海に鉄分を補給する実験を行うために最適な場所を見出すのに役立つ可能性がある。一部の生物学者たちは、この方法が地球温暖化対策に有効だと考えている。しかし、こうした「鉄肥沃化」が海洋生物を脅かし、ほかの種類の温室効果ガスの生成を促進する結果になりかねないという懸念もあるという。

 これに対しCapone氏は、より温度の低い海域では深海からの上昇流により鉄肥沃化が抑制される一方で、熱帯海域では取り込まれた有機固形物が海面に戻らないよう作用すると説明する。「鉄肥沃化という観点から、人間社会が海洋上で適切な地域を選ぶとすれば、高緯度の場所よりも、こうした地域こそがおそらく最も成果の得られる場所だろう」(c)AFP