【6月25日 AFP】日本の捕鯨への国際的非難が高まるなか、「捕鯨の町」は伝統を絶やすまいと銛を握りしめている。

 国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)の総会が23日からチリのサンティアゴ(Santiago)で始まったが、日本は年間1000頭程度の捕獲枠の維持ならびに本格的な商業捕鯨の再開を求めるものとみられる。

 だが、日本の捕鯨にはオーストラリアを筆頭にした国際社会ばかりか、国内からも非難が高まっている。

■太地町の捕鯨関係者は

 400年の捕鯨の歴史を持つ和歌山太地町では、クジラの刺身は市場でもレストランでも人気だ。

 太地町漁業協同組合の杉森宮人(Miyato Sugimori)氏(57)は、捕鯨への国際的批判は感情的なもので、科学的根拠に基づいたものではないと主張する。「欧米のテレビはよく、私たちがクジラをしとめる瞬間にやってきて、流血の様子を報道するけれど、向こうの人たちだって牛や豚を建物の中で見えないように処分している。こっちはたまたま海でやっているが、そこにやってきてテレビカメラを回すのは不公平だと思う」

「別に私たちは、クジラが絶滅するまで取り尽くそうなんて思っていない。そうなったらわれわれだって困る。継続的に捕鯨ができるように、捕獲の量を管理しなければ、といっているだけ」

■網走では

 だが、杉森氏のこうした意見に、日本人全員がうなずくわけではない。

 鯨油生産を目的とした米国の捕鯨活動にならって1918年に捕鯨が開始された北海道網走市では、鯨肉への関心が失われつつある。

 元高校教師で捕鯨の歴史にも詳しい菊地慶一(Keiichi Kikuchi)氏(75)は、「クジラの肉は珍しいものになっていて、特に若い人にとっては身近でなくなっている。捕鯨業者だけが捕鯨数やIWCの議論に関心を持っている」と話す。

 日本政府は網走市に対し、年間8頭のツチクジラの捕獲を認めている。このクジラはIWCの管理下には置かれていない。

■漁業の保護が政府の基本方針

 IWCは1986年から商業捕鯨の一時禁止(モラトリアム)を実施しており、調査捕鯨のみが認められているが、ノルウェーとアイスランドだけは、モラトリアムを公然と無視している。

 オーストラリアとニュージーランドの両政府は、南極海における日本の捕鯨を中止させるため国際法廷に提訴する用意があることを表明している。これに対し、日本政府は「欧米諸国は文化に無神経」と非難、IWCに加盟している発展途上国へのロビー活動を展開している。

 日本で沿岸捕鯨が行われているのは、太地町を含む4つの町に過ぎない。だが、漁協は強い政治的影響力を持つだけに、日本政府は漁業全般を保護する立場を貫いているとの見方もある。

■「鯨肉が好き」は4人に1人

 クジラ肉のプロモーションなどを目的に設立された合同会社「鯨食ラボ(Geishoku Labo)」は、鯨肉の在庫を減らすために割安価格で売らざるをえなくなっている。学校では、鯨肉バーガーや鯨肉カレーなどを給食に出して、鯨肉に親しんでもらおうとしている。

「沿岸捕鯨の伝統のある地域とそれ以外とでは、鯨肉の消費量に大きな違いがある。そこで、今私たちがやろうとしていることは、なるべく多くの人に鯨肉を味わってもらうということです」と鯨食ラボの中田博(Hiroshi Nakada)氏。

 日経新聞(Nikkei)の最近の調査では、回答者のほとんどが「鯨肉をもっと食べたい」と答えたものの、「鯨肉が好き」と答えた人は4人中1人、20代では12%にすぎなかった。 

■グリーンピースの主張

 環境保護団体グリーンピース・ジャパン(Greenpeace)海洋生態系問題担当の花岡和佳男(Wakao Hanaoka)氏は、今日では捕鯨が許される余地はないとした上で、日本はIWC加盟国として、既に持っている捕鯨のための装置やインフラを「殺りくを行わない」国際的な調査捕鯨に役立てるべきだと主張する。(c)AFP