【6月19日 AFP】地球上の動植物の90%が消滅した大量絶滅は、潮の満ち引きが主因だったとする研究結果が英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 地球上の生物の多くは過去5億年で、それまでの少なくとも5倍の速さで絶滅している。その原因の解明は古生物学および生物学上、大きな課題となっている。

 これまでその原因として、火山の噴火や小惑星の地球衝突で大気中に舞い上がった大量の粉じんが幕となって引き起こされる冷却効果、二酸化炭素の排出量増加による温暖化、病気、資源をめぐる種間の争いなどが指摘されてきた。

 今回発表された研究結果は、劇的な大変動ではなく、潮の干満と地質時代のたい積物を主要因として結論づけている。

■恐竜絶滅の主因だった可能性も

 論文の著者、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)のシャナン・ピーターズ(Shanan Peters)准教授(地質学)は、「潮の干満とたい積物は、地球上の生物に甚大な影響を与える」と指摘する。

 地球上の生命の誕生は約35億年前にさかのぼる。以来、大量絶滅は20回以上発生しており、多くの場合で単細胞生物も含まれている。また過去5億4000万年で5回の大量絶滅が発生したことが立証されているが、その際に絶滅したのは主に海洋動植物だった。

 巨大な小惑星が約6500年前、メキシコに衝突し直径180キロのクレーターを作ったケースを除き、大量絶滅の原因は激しく論争されている。

 ピーターズ氏はこのメキシコのケースも、当時北米と欧州の大半を覆っていた海洋で突然引き潮が発生しており、それが恐竜絶滅の主因となった可能性があると語る。

■絶滅の発生と海水位の変化が一致

 ピーターズ氏は自身の仮説を証明するため、たい積岩の地層に見られる2種類の古代の浅瀬の環境を調べた。

 1つは、白い砂浜と透明な青い海が広がる典型的な観光地の環境。このような環境のたい積物は主に甲殻類が排せつしたカルシウムからなる。

 もう1つは、茶色い泥混じりの砂浜、岩場、緑色の濁った海水が特徴の環境。たい積物は長期にわたり土地が浸食された結果たまったものだ。

  「化石記録で過去5億年の絶滅の発生率を調べ、それをたい積岩に示されている環境の変化と比較してみたが、海水位の変化を原因とする場合が大半だった」とピーターズ氏は説明する。

 絶滅の発生と海水位の変化の適合率は非常に高く、劇的な海水位の上昇や下降はほかの要因よりも、大量絶滅に関係していることを示している。(c)AFP/Marlowe Hood