【5月29日 AFP】米国オハイオ(Ohio)州シンシナティ大学(University of Cincinnati)の研究チームは、人間が胎内にいる期間から幼児期において鉛との接触機会が多いと、成人後に犯罪行為に至る確率が増えるという調査結果を発表した。

 研究チームは1979-1984年にわたり、鉛汚染地域として知られる都市部の貧困地域で、妊婦の血中鉛濃度を測定。さらに、その女性たちから生まれた子ども(被験者)計250人の出生時から6歳半にかけて、血中鉛濃度を測定し、その後被験者が19-24歳の時に全員の逮捕歴を調査した。

 この結果、1回以上の逮捕歴があったのは被験者の半数以上の55%、逮捕回数は延べ800回で、出生時および6歳時の血中鉛濃度が高いほど逮捕歴が多かった。また、血中鉛濃度が1デシリットル中5マイクログラム増えるごとに逮捕回数が増えていた。さらに、幼年時代の平均血中鉛濃度が高いほど、暴力的な犯罪での逮捕が多かった。

 以上の結果を踏まえて研究チームは、幼年期の鉛との接触が、後に犯罪行為の起こしやすさにつながる複数の潜在的な神経行動学的欠陥を誘因するのではと指摘している。

 また男性と女性では、男性のほうが女性よりも5倍、逮捕される傾向が高かった。過去の研究から、中枢神経系の発達において男性のほうが女性よりも周囲の環境の影響を受けやすいことが分かっており、より行動上の問題に至りやすいのだろうと研究チームは分析している。

 前年発表されたある研究によると、1970年代にガソリンと塗料における鉛の使用を段階的に廃止した9つの国では、犯罪率が低下したという。鉛は脳に損傷を与える毒性重金属として知られている。(c)AFP