【4月11日 AFP】乱獲、気候変動、汚染などで世界中の海が大きな被害を受け、数百万人の将来の食料安全保障が脅かされている。

 政府、環境団体、大学などの専門家数百人が参加してベトナムのハノイ(Hanoi)で開かれ、11日に閉幕した海洋・沿岸・島嶼に関する世界会議(Global Conference on Oceans, Coasts, and Islands)で、このような警告が出された。今回の会議の主要議題は、海洋生態系と食料安全保障。

 地表の3分の2を覆う海は、世界のタンパク源の5分の1を供給する。しかし、魚類資源の75%はすでに利用し尽くされているという。

■唯一の道は魚類資源の保護・再建

 専門家によると、海水温上昇はサンゴ礁の白化を招き、青粉に養分を与え、海流を変え、ひいては気候変動を引き起こす。さらに海面上昇は将来、バングラデシュからニューヨーク(New York)に至るまでの沿岸地域に脅威をもたらす。

 ワールド・オーシャン・オブザーバトリー(World Ocean Observatory)のピーター・ニール(Peter Neill)代表は「人々は海が切り離された場所だと考えがちだ。しかし実際は、貿易、輸送、自然体系、気候パターンといった人類の生存にかかわるすべてのことを介して、われわれとつながっている」と述べた。

 米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)の漁業関連主任顧問スティーブン・ムラウスキー(Steven Murawski)氏は「漁獲競争は現実だが、すでにこれ以上捕獲できない状態になっている。世界の総漁獲高は年間1億トンで、この数値に変化はほとんど見られない。従って、魚類資源の保護・再建のほかに道はない」と述べ、持続可能な養殖が不足を補うことができるかもしれないと付け加えた。

 国際環境団体コンサベーション・インターナショナル(Conservation InternationalCI)」のフレーザー・マギルブレー(Frazer McGilvray)氏は、大量の漁船が大量の魚を捕獲する現在の乱獲状態では、魚類資源の再建が間に合わないため、長期的な持続可能性が危険にさらされているとし、「海が滅びれば人類も滅びる。海が地球を支えているのだ」と指摘した。

■資源の保護・再建に向け必要なものとは

 世界はすでに乱獲の影響を受け始めている。北大西洋のタラ漁が1990年代に崩壊したほか、カタクチイワシはチリから、ニシンはアイスランドから、イワシはカリフォルニア(California)から姿を消した。

 海の64%は国家の管轄権外にあるため、国際合意の形成や違法漁業の撲滅が難しいのが現状だ。

 一方、国連環境計画(United Nations Environment ProgrammeUNEP)のエリック・アドラー(Ellik Adler)氏は、陸上由来の汚染も海に重圧を与えていると指摘する。「未処理汚水や工場、精製所、石油業界からの排水が大量に海に流れ込んでおり、これが甚大な被害を与えている。海洋汚染に政治的国境はない」と述べた。

 簡単な解決策はほとんどないが、決してゼロではない。目下、海洋保護地域の世界的ネットワークの構築が検討されている。(c)AFP/Frank Zeller